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1-1-11 法令科目 憲法 29条-30条/103条 人権

第二十九条  財産権は、これを侵してはならない。
2  財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3  私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

前回までに学んだ憲法22条の中に職業選択の自由がありましたね。精神的自由権(第18回)は、経済的自由権にも触れていたのを覚えていますか? 今回は、復習も兼ねて、もう一度基本的人権の中での経済的自由権の位置を確認してみましょう。

経済的自由権については、第10回で社会活動を行う上で経済的に保障されている権利と学びましたが、今回は、経済的自由権の一つ財産権を①財産権保障の意味、②財産権の制限、③財産権の侵害と損失補償――に分けて解説していきます。

Ⅰ.財産権の保障の意味
財産権とは、例えば所有権などの物権、債権、著作権、漁業権といった財産的な価値を持つものすべての権利のことです。この財産権の保障を規定した憲法29条を見てみましょう。

判例などでは、29条で規定している財産権の保障は、個人が今持っている具体的な財産に対する権利と、個人が財産を持っていいという私有財産制度の両方を保障するものだ――としています。

この例として覚えなければならないのが「森林法共有林事件」です。事件は、ある兄弟が、父親から2分の1ずつの権利で生前贈与されていた山林の経営をめぐって、対立したことから始まります。弟は、兄を被告として、共有物の分割請求について定めた民法に基づき、山林の分割請求を求めました。しかし、森林の生産力向上を目的として定められた森林法では、民法の規定にかかわらず、森林の持ち分が2分の1以下の共有者による分割請求は認められないとされていたので、分割ができないことになったのです。そこで、原告である弟は、この森林法の規定が財産権を保障した日本国憲法29条に違反しており違憲であると主張して争いました。

この事件の判決は、財産権に関する初の違憲判決として注目されました。
ところが、その違憲の理由は、規制手段が厳格に合理的なものであるかどうか、あるいはその規制手段の不合理性が明白なものであるかどうかを規制の目的に応じて判断するとあいまいで、これまで他の「経済的自由権」に関する判例上で展開されてきた違憲審査基準とどのような関係にあるのかは、明らかにされませんでした。
しかし、この判決から約1カ月後に、この森林法規定は削除されました。

Ⅱ.財産権の制限
憲法29条2項の規定は、公共の福祉による財産権の制限を認めたものと言われています。現在では、いろいろな法律で様々な財産権に対する制限が行われていますが、規制目的によって次の2つに分類されます。
①消極目的規制(内在的な制約:社会生活における公共の安全と秩序の維持)
②積極目的規制(政策的な制約:福祉国家理念の実現)
どこかで見たような気がしませんか? そうです、職業選択の自由と同じ規制目的二分論による規制です。ちょっと自信がなくなった人は、第18回を見てください。
現行法上での①の消極目的規制の例は、消防法による建築基準や食品衛生法による食品利用の制限――などです。
また、②の積極目的規制の例は、独占禁止法によるカルテル禁止や借地借家法による賃貸人保護のための様々な規制――などです。
そして、上記の「森林法共有林事件」では、②の基準で判断し違憲としました。
県条例で財産権を規制できるかどうかが問題となった事件に、「奈良県ため池条例事件」があります。この事件は、奈良県ではため池の破損などによる被害を防止するため、「ため池の保全に関する条例」を制定し、近隣の農民らが所有し耕作していたため池周辺の堤とう(堤防)の耕作を禁止しました。でも、農民らは、禁止されても依然として耕作を続けていたため、検察官が立件したことで、県条例が憲法29条の財産権保障に違反するのではないかが争われた事件です。

判例では、2つのことを言っています。1つは、ため池の決壊などが起これば、周りの住民に与える被害が重大なものだから、例え、ため池の堤防となっている土地の所有者でも、そこを耕作してはいけないという条例は、違憲とは言えない、ということです。これは、①の消極目的制限でもあるし、②の積極目的制限でもありますね。
もう1つは、損失補償の必要性について言っています。これは29条の3項に当たる部分です。もういちど、29条の条文を読んで、次に進みましょう。

Ⅲ.財産権の侵害と損失補償
3項を読んでみると、「正当な補償」と「公共のために用いる」ことを条件として、私有財産を公共用地に提供させたり、使用に制限をかけたりできることを規定していることが分かると思います。
では、「公共のために用いる」とは、どのような場合を指すのでしょうか?
これには狭い意味で捉える狭義説と、広い意味で捉える広義説の2つがあります。
狭義説によれば、公共のためとは、例えば学校や病院、鉄道や道路の建設などの公共事業のためには私有財産を提供するという考え方です。
一方、広義説によれば、公共事業はもちろん、間接的でも公共の利益のためになるのなら、その土地を提供させたり、使用に制限をかけてもOKという考え方です。判例では、広義的に解釈していますので、「広義的な公共のために用いる」を覚えてくださいね。
次に、「正当な補償」とは、どのようなものでしょうか?
一般的には、正当な補償が必要なのは、特定の個人に対して、特別の犠牲を強いる場合に限ると考えられています。そして、その上で、特別の犠牲を強いているかどうかが判断の基準になります。
さて、正当な補償が必要となった場合、今度はどの程度の補償が正当なのかが次の問題となります。これには、次の3つの説があります。
①完全補償説
②相当保障説
③折衷説
①の完全補償説は、生じた損失のすべてを完全に保障するという考えです。例えば、ダム建設で家と土地の立ち退きを強いられた場合、土地と家屋の価格のほか、引っ越し費用なども保障することです。
②の相当保障説は、財産に対する制限の目的や制限の必要性の程度などを考慮した上で算定される合理的な金額なら、市場価格を下回ってもいいという考えで、戦後の農地改革における農地の収用などで採られた考え方で、かなり特殊な時代背景があります。【農地改革事件:最大判昭28.12.23】
③の折衷説は、完全補償が原則ではあるけれど、農地改革のように財産権に対するそれまでの社会的評価が変化したことで、財産権が公共のために用いられるという例外的な場合は、相当保障でもいいという考え方です。
通常、法律で公共のための財産権の収用を定める場合は、それに伴う補償についても規定します。もし、規定がない場合は、「河川附近地制限令事件(最判昭43.11.27)」の判例が通説となっています。
要点をまとめると、法律にあるべき補償規定がない場合には、直接憲法29条3項を根拠として補償を請求できることとなっています。また、同時に争われた補償規定のない法律は違憲が合憲かについては、憲法の規定で補償が請求できるのだから、たとえ補償規定のない法律でも合憲としています。
どぶろく裁判(最判平1.12.14)

事例

Aは、酒類製造の免許を受けず、自己消費目 的で「どぶろく(にごり酒)」を作っていた が、それが酒税法に違反するとして起訴さ れ、1審・2審で有罪判決を受けた。これを 不服としたAは、自己消費目的の酒類製造 は、販売目的の酒類製造とは異なり、放任し ても酒税収入が減少するおそれはないから、 これを処罰することは、憲法31条、13条に 違反するとして上告した。

判例の 見解

無免許で自己消費目的の酒類製造を処罰す ることは、憲法31条、13条に違反するか。

酒税法の規定は、自己消費を目的とする酒 類製造であっても、これを放任するときは酒 税収入の減少など酒税の徴収確保に支障を生 じる事態が予想されるところから、国の重要 な財政収入である酒税の徴収を確保するた め、製造目的のいかんを問わず、酒類製造を 一律に免許の対象とした上、免許を受けない で酒類を製造した者を処罰することとしたも のであり、これにより自己消費目的の酒類製 造の自由が制約されるとしても、そのような 規制が立法府の裁量権を逸脱し、著しく不合 理であることが明白であるとはいえず、憲法 31条、13条に違反するものでない。

判例の POINT

自己消費を目的とする「どぶろく作り」は、 個人の経済的活動の一種であり、主に29条 1項の財産権保障の問題であるとする見解が 有力である。本判決も「どぶろくを作る自 由」が独立の権利として13条によって保障 されることを前提とするものではなく、単に Aの13条違反の主張に理由がないことを述 べたにすぎないと考えられる。

チェック判例

自動速度監視装置による運転者の容ぼうの写 真撮影は、現に犯罪が行われている場合になさ れ、犯罪の性質、態様からいって緊急に証拠保全 をする必要性があり、その方法も一般的に許容さ れる限度を超えない相当なものであるから、憲法 13条に違反せず、また、右写真撮影の際、運転者 の近くにいるため除外できない状況にある同乗者 の容ぼうを撮影することになっても、憲法13条、 21条に違反しない(最判昭61.2.14)。 プライバシーの侵害に対し法的な救済が与え られるためには、公開された内容が①私生活上の 事実又は事実らしく受け取られるおそれのある事 柄であること、②一般人の感受性を基準にして当該 私人の立場に立った場合公開を欲しないであろう と認められる事柄であること、③一般の人々に未だ 知られていない事柄であることを必要とし、このよ うな公開によって当該私人が実際に不快、不安の 念を覚えたことを必要とする(東京地判昭 39.9.28)。

森林法共有林事件(最大判昭62.4.22)

事例

Aは、兄Bとともに父親から森林の贈与を受 けた(持分は各自2分の1)が、森林経営を 巡ってBと対立したため、森林の分割を裁判 所に請求した。裁判所が森林法186条に基づ いてAの請求を棄却したため、Aは、同条は 憲法29条に違反すると主張した。 注 民法 は、共有物の分割を原則として自由に認 め ている(民法256条1項本文)が、森林法 186条 はその例外として、共有持分が2分の 1以下の共 有者による分割を否定していた (本判決後、削 除)。

判例の 見解

①憲法29条1項、2項の趣旨 憲法29条は、1 項において「財産権は、 これを侵してはな らない。」と規定し、2項 において「財産 権の内容は、公共の福祉に適 合するよう に、法律でこれを定める。」と規 定し、私 有財産制度を保障しているのみでな く、社 会的経済的活動の基礎をなす国民の 個々の 財産権につきこれを基本的人権として 保障 するとともに、社会全体の利益を考慮し て 財産権に対し制約を加える必要性が増大す るに至ったため、立法府は公共の福祉に適合 する限り財産権について規制を加えることが できる、としているのである。 ②財産権を 制限する立法の違憲審査基準 財産権に対し て加えられる規制が憲法29 条2項にいう公 共の福祉に適合するものとし て是認される べきものであるかどうかは、規 制の目的、 必要性、内容、その規制によって 制限され る財産権の種類、性質及び制限の程 度等を 比較考量して決すべきであるが、裁判 所と しては、立法府がした右比較考量に基づ く 判断を尊重すべきものであるから、立法の 規制目的が社会的理由ないし目的に出たとは いえないものとして公共の福祉に合致しない ことが明らかであるか、又は規制目的が公共 の福祉に合致するものであっても規制手段が 右目的を達成するための手段として必要性若 しくは合理性に欠けていることが明らかで あって、そのため立法府の判断が合理的裁量 の範囲を超えるものとなる場合に限り、当該 規制立法が憲法29条2項に違背するものと して、その効力を否定することができる。 ③共有物分割請求権の否定は、財産権の制 限に当たるか。

共有物がその性質上分割することのできな いものでない限り、分割請求権を共有者に否 定することは、憲法上、財産権の制限に該 当し、かかる制限を設ける立法は、憲法29 条2項にいう公共の福祉に適合することを要 する。 ④森林法186条の立法目的は公共の福 祉に 合致しないか。

森林法186条の立法目的は、森林の細分化 を 防止することによって森林経営の安定を図 り、ひいては森林の保続培養と森林の生産力 の増進を図り、もって国民経済の発展に資す ることにある。かかる立法目的は、公共の福 祉に合致しないことが明らかであるとはいえ ない。 ⑤森林法186条が共有林の分割請求を 否定 していることは憲法29条2項に違反す る か。

森林法186条が共有森林につき持分価額2 分 の1以下の共有者に民法256条1項所定の 分 割請求権を否定しているのは、森林法186 条 の立法目的との関係において、合理性と必 要性のいずれをも肯定することのできないこ とが明らかであって、この点に関する立法府 の判断は、その合理的裁量の範囲を超えるも のである。したがって、同条は、憲法29条 2項に違反し、無効というべきであるから、 共有森林につき持分価額2分の1以下の共有 者についても民法256条1項本文の適用があ る。

判例の POINT

①最高裁が財産権に関する法令を初めて法令 違憲と判断した判決である。 ②本判決は、 薬局距離制限事件(前掲最大判 昭50.4.30) を引用して比較的厳格な審査基 準を展開し ている。しかし、森林法186条の 立法目的を 消極目的・積極目的のいずれと考 えている のか、そもそも同条と規制目的二分 論との 関係をどう考えているのかは明らかで はな い。 ③本判決が森林法186条を法令違憲とし たの は、規制手段が立法目的との関係で合 理性を 有しないと判断したためである。立 法目的自 体は合憲と考えている。

奈良県ため池条例事件(最大判昭 38.6.26)

事例

奈良県は、ため池の破壊・決壊等を防止する ため、「ため池の保全に関する条例」(ため 池条例)を制定し、ため池の堤とう(ため池 の周囲の土手)に農作物等を植える行為を禁 止し、違反者には罰金を科すこととした。条 例制定前から、ため池の堤とうに農作物を植 えてきたAは、条例制定後も農作物を植えて いたため、ため池条例違反で起訴された。そ こで、Aは、当該条例は憲法29条に違反す ると主張した。

判例の 見解

①本条例は憲法29条2項に違反するか。

ため池の破損、決かいの原因となるため池 の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも 適法な財産権の行使として保障されていない ものであって、憲法、民法の保障する財産権 の行使のらち外にあるものというべく、従っ て、これらの行為を条例をもって禁止、処罰 しても憲法および法律にてい触またはこれに 逸脱するものとはいえない。 なお、事柄に よっては、地方公共団体の特 殊な事情によ り、国において法律で一律に定 めることが 困難または不適当なことがあり、 その地方 公共団体ごとに、その条例で定める こと が、容易かつ適切なことがある。本件の よ うな、ため池の保全の問題は、まさにこの 場合に該当する。それ故、本条例は、憲法 29条2項に違反しない。 ②本条例による財 産権の制限には損失補償 が必要か。

本条例は、災害を防止し公共の福祉を保持 するためのものであり、ため池の堤とうを使 用する財産上の権利の行使を著しく制限する ものではあるが、結局それは、災害を防止し 公共の福祉を保持する上に社会生活上やむを 得ないものであり、そのような制約は、ため 池の堤とうを使用し得る財産権を有する者が 当然受忍しなければならない責務というべき ものであって、憲法29条3項の損失補償を 必要としない。

判例の POINT

①条例で財産権を制限することが憲法29条 2項に違反するかについては、住民の代表者 である議会が制定する条例は民主的立法であ る点において国会の制定する法律に類似する から、29条2項の「法律」には条例も含ま れるとの理由で否定する見解が有力である。 しかし、本判決はそのような論理をとらず、 ⑴ため池の破損、決かいの原因となるような 行為は、そもそも財産権の行使といえないか ら、29条2項違反は問題とならないこと、 ⑵ため池の保全という地方の特殊事情に属す る事項は、法律で一律に規制するよりも、条 例で規制した方が容易かつ適切であること等 を理由に、29条2項に反しないという結論 を導いている。 ②本条例が禁止している行 為がそもそも財産 権の行使といえないとす る本判決の立場から すれば、29条3項の損 失補償の要否は当然 に問題とならないこと になろう。もっとも、 判例の見解②に引用 した判例の文面からする と、災害の防止と いう消極目的による財産権 の制約には損失 補償は不要であることを明ら かにしたと解 する余地もある。

関連判例

河川附近地制限令違反事件(最大判昭 43.11.27) 法令に損失補償の規定がない場 合、直接憲法29条 3項を根拠にして補償を 請求することができる か。

損失補償に関する規定がないからといって、 あ らゆる場合について一切の損失補償を全 く否定す る趣旨とまでは解されず、その損 失を具体的に主 張立証して、別途、直接憲 法29条3項を根拠にし て、補償請求をする 余地が全くないわけではな い。 法令に損失 補償の規定がない場合に ついては、補償請 求はできないとする見解、補償 が必要とな る制限を課しながら補償請求に関する 規定 を欠くような法令は憲法29条3項に反し無効 であるとする見解等がある。しかし、本判決 は、 このような見解を採らず、直接29条3 項を根拠に 補償を請求することができ、補 償規定を欠く法令 は違憲無効とならないと した。

農地改革事件(最大判昭28.12.23)

事例

戦前、大地主であったAは、戦後制定され た自作農創設特別措置法により自己所有地を 国に買収されたため、買収価格が憲法29条 3項の「正当な補償」にあたらないとして、 価格の増額を求めて提訴した。

判例の 見解

憲法29条3項の「正当な補償」の意味 憲法 29条3項にいうところの財産権を公 共の用 に供する場合の正当な補償とは、その 当時 の経済状態において成立することを考え ら れる価格に基き、合理的に算出された相当 な額をいうのであって、必ずしも常にかかる 価格と完全に一致することを要するものでな い。

判例の POINT

29条3項の「正当な補償」の意味について は、補償の対象となる財産の客観的な市場価 格とする完全補償説(最判昭48.10.18)と、 制限の程度等を考慮して合理的に算出された 相当な額で足りるとする相当補償説があ る。本判決は、相当補償説を採用しており、 昭和48年判決との整合性が問題となるが、 本件の自作農創設特別措置法による土地買収 は、農地改革という既存の財産法秩序に変革 をもたらすために実施された特殊な規制なの で、完全補償を原則とし、例外的な場合に相 当補償で足りるとするのが最高裁の基本的立 場であると考えられる。

区分所有法70条の合憲性(最判平 21.4.23)

事例

X団地は、その大半の室が分譲マンションと して売り出された3棟の居住用建物で構成さ れているが、建築後数10年が経過して老朽 化が著しいため、区分所有法70条に基づい て、区分所有者の集会で、3棟すべてにつき 一括して、取り壊し、かつ、新たな建物を建 築する旨の一括建替え決議をした。これに対 し、団地内の1棟に居住し、建て替えに反対 している区分所有者Aは、区分所有法70条 は建替えに参加しない少数者の財産権を侵害 するものであり、憲法29条に違反すると主 張した。

判例の 見解

団地内の建物について一括して、そのすべ てを取り壊し、かつ、新たな建物を建築す る旨の決議(一括建替え決議)を認める区 分所有法70条は、憲法29条に違反するか。

区分所有権の行使(区分所有権の行使に伴 う共有持分や敷地利用権の行使を含む。以下 同じ。)は、必然的に他の区分所有者の区分 所有権の行使に影響を与えるものであるか ら、区分所有権の行使については、他の区分 所有権の行使との調整が不可欠であり、区分 所有者の集会の決議等による他の区分所有者 の意思を反映した行使の制限は、区分所有権 自体に内在するものであって、これらは、区 分所有権の性質というべきものである。区分 所有建物について、老朽化等によって建替え の必要が生じたような場合に、大多数の区分 所有者が建替えの意思を有していても一部の 区分所有者が反対すれば建替えができないと いうことになると、良好かつ安全な住環境の 確保や敷地の有効活用の支障となるばかり か、一部の区分所有者の区分所有権の行使に よって、大多数の区分所有者の区分所有権の 合理的な行使が妨げられることになるから、 1棟建替えの場合に区分所有者及び議決権の 各5分の4以上の多数で建替え決議ができる 旨定めた区分所有法62条1項は、区分所有 権の上記性質にかんがみて、十分な合理性を 有するものというべきである。そして、70 条1項は、団地内の各建物の区分所有者及び 議決権の各3分の2以上の賛成があれば、団 地内区分所有者及び議決権の各5分の4以上 の多数の賛成で団地内全建物一括建替えの決 議ができるものとしているが、団地内全建物 一括建替えは、団地全体として計画的に良好 かつ安全な住環境を確保し、その敷地全体の 効率的かつ一体的な利用を図ろうとするもの であるところ、区分所有権の上記性質にかん がみると、… 70条1項の定めは、なお合理 性を失うものではない。また、建替えに参加 しない区分所有者は、売渡請求権の行使を受 けることにより、区分所有権及び敷地利用権 を時価で売り渡すこととされているのであり (70条4項、63条4項)、その経済的損失 については相応の手当がされている。そうす ると、規制の目的、必要性、内容、その規制 によって制限される財産権の種類、性質及び 制限の程度等を比較考量して判断すれば、区 分所有法70条は、憲法29条に違反するもの ではない。

判例の POINT

複数の棟からなる団地内の建物の建替えにつ いて、区分所有法は、1棟ごとに独立して建 て替える1棟建替え(62条)のほかに、団地 内のすべての建物を一括して建て替える一括 建替えを認めている。本判決は、建替え決議 による区分所有権行使の制限は区分所有権そ のものに内在する制限であること、建替えに 反対する者は、建替えに参加する者から売渡 請求権を行使されることによって経済的損失 を免れること等を理由に一括建替えに必要な 決議要件を定める区分所有法70条が憲法29 条に違反しないことを、最高裁として初めて 明らかにした。

チェック判例

土地収用法における損失の補償は、特定の公 益上必要な事業のために土地が収用される場 合、 その収用によって当該土地の所有者等 が被る特別 な犠牲の回復をはかることを目 的とするものであ るから、完全な補償、す なわち、収用の前後を通 じて被収用者の財 産価値を等しくならしめるよう な補償をな すべきであり、金銭をもって補償する 場合 には、被収用者が近傍において被収用地と同 等の代替地等を取得することをうるに足りる 金額 の補償を要する(最判昭48.10.18)。

法律でいったん定められた財産権の内容を事 後の法律で変更しても、それが公共の福祉に 適合 するようにされたものである限り、こ れをもって 違憲の立法ということはできな い。そして、右の 変更が公共の福祉に適合 するようにされたもので あるかどうかは、 いったん定められた法律に基づ く財産権の 性質、その内容を変更する程度、及び これ を変更することによって保護される公益の性 質などを総合的に勘案し、その変更が当該財 産権 に対する合理的な制約として容認され るべきもの であるかどうかによって、判断 すべきである(最 大判昭53.7.12)。

航海に関して生じた一定の債権について船舶 所有者等の責任を制限する船主責任制限法 (船舶 所有者等の責任の制限に関する法 律)は、公共の 福祉に適合し、憲法29条1 項、2項に違反しな い(最大決昭 55.11.5)。

農地法旧4条1項、旧5条1項が農地の転用 には原則として都道府県知事の許可が必要で ある とする目的は、土地の農業上の効率的 な利用を図 り、営農条件が良好な農地を確 保することによっ て、農業経営の安定を図 るとともに、国土の合理 的かつ計画的な利 用を図るための他の制度と相 まって、土地 の農業上の利用と他の利用との利用 関係を 調整し、農地の環境を保全することにあ る。この規制目的は、農地法の立法当初と比 較し て農地をめぐる社会情勢が変化してき たことを考 慮しても、なお正当性を肯認す ることができる し、その規制手段が、規制 目的を達成するために 合理性を欠くという こともできない。したがっ て、農地法旧4 条1項、旧5条1項は、憲法29条 に違反し ない(最判平14.4.5)。

消費者契約法9条1号は、消費者契約の解除 に伴って事業者が消費者に対し高額な損害賠 償等 を請求することによって、消費者が不 当な出えん を強いられることを防止するこ とを目的とし、そ のような目的を達成する ための手段として、損害 賠償の予定等を定 める条項のうち、解除される消 費者契約と 同種の消費者契約の解除に伴い事業者 に生 ずべき平均的な損害の額を超える部分を無効 とするにとどまるから、憲法29条に違反しな い(最判平18.11.27)。

利用資格に制限がない市営と畜場を、市との 間に委託契約等の継続的契約関係がない利用 業者 等が事実上独占的に使用する状況が継 続していた としても、利用業者等がこれに より享受してきた 利益は、基本的には本件 と畜場が公共の用に供さ れたことの反射的 利益にとどまる。そして、本件 と畜場は、 と畜場法施行令の改正等に伴い必要と なる 施設の新築が実現困難であるためにやむなく 廃止されたのであり、そのことによる不利益 は住 民が等しく受忍すべきものであるか ら、利用業者 等が本件と畜場を利用し得な くなったという不利 益は、憲法29条3項に よる損失補償を要する特別 の犠牲には当た らない(最判平22.2.23)。

【人身の自由】

第三者所有物没収事件(最大判昭 37.11.28)

事例

密輸を企て、関税法118条1項違反で有罪判 決を受けたAは、没収された密輸貨物の中に 第三者の所有物が含まれていたことから、当 該第三者に財産権擁護の機会を与えないで没 収することは、憲法29条に違反すると主張 した。

判例の 見解

①所有者に告知・弁解・防禦の機会を与え ずに没収することは、憲法に違反するか。

第三者の所有物を没収する場合において、 その没収に関して当該所有者に対し、何ら告 知、弁解、防禦の機会を与えることなく、そ の所有権を奪うことは、著しく不合理であっ て、憲法の容認しないところである。なぜな ら、憲法29条1項は、財産権は、これを侵 してはならないと規定し、また同31条は、 何人も、法律の定める手続によらなければ、 その生命若しくは自由を奪われ、又はその他 の刑罰を科せられないと規定しているが、第 三者の所有物の没収は、Aに対する附加刑と して言い渡され、その刑事処分の効果が第三 者に及ぶものであるから、所有物を没収され る第三者についても、告知、弁解、防禦の機 会を与えることが必要であって、これなくし て第三者の所有物を没収することは、適正な 法律手続によらないで、財産権を侵害する制 裁を科するに外ならないからである。そし て、このことは、右第三者に、事後において いかなる権利救済の方法が認められるかとい うこととは、別個の問題である。 ②関税法 118条1項は、憲法29条、31条に 違反する か。

関税法118条1項は、同項所定の犯罪に関 係 ある船舶、貨物等がA以外の第三者の所有 に属する場合においてもこれを没収する旨規 定しながら、その所有者たる第三者に対し、 告知、弁解、防禦の機会を与えるべきことを 定めておらず、また刑訴法その他の法令にお いても、何らかかる手続に関する規定を設け ていない。したがって、関税法118条1項に よって第三者の所有物を没収することは、憲 法31条、29条に違反する。 ③Aは、第三者 の憲法上の権利が侵害され たことを理由に 違憲の主張をすることがで きるか。

没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三 者の所有物に関する場合であっても、被告人 に対する附加刑である以上、没収の裁判の違 憲を理由として上告をなしうることは、当然 である。のみならず、被告人としても没収に 係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使 用、収益をなしえない状態におかれ、更には 所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等 を行使される危険にさらされる等、利害関係 を有することが明らかであるから、上告によ りこれが救済を求めることができる。

判例の POINT

①本判決は、31条が手続を法律で定めるだ けでなく、手続の内容が適正であることも要 求しているとする見解を採っている。 ②本 判決は、ともすれば31条違反としてい る点 にのみ目がいきがちであるが、29条違 反と していることにも注意が必要である。 ③本 判決が関税法そのものを法令違憲とした の か、本事案に関税法を適用したことを違憲 (適用違憲)としたのかは明らかではない。 ④本判決は、訴訟において、どのような場合 に憲法違反の主張ができるかという「憲法訴 訟の当事者適格(違憲主張の適格)」の問題 について、第三者の憲法上の権利が侵害され たことを理由に違憲の主張をすることができ るという重要な判断を下している。

第三十条  国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

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