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1-1-21 法令科目 憲法 92条-95条/103条 地方自治

第八章 地方自治

 

第九十二条  地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

 

 

 

地方自治とは、地方における政治・行政をその地域の住民の意思に基づき、国からは独立した地方公共団体がその権限と責任において自主的に行うことです。
日本国憲法では、民主主義の進展と広がり、中央政府への権力集中の弊害の防止などのため、地方自治が需要な意義を持つことを認めて、第8章として取り上げています。
第8章の条文を92条から95条まで順に解説していきます。

Ⅰ.地方自治の基本原理

地方公共団体とは、通常、国家の領土の一定の区域をその構成の基礎とし、その区域内の住民をその構成員として自治権に基づいてその区域内の行政を行う団体のことを指します。
地方自治法上の地方公共団体には、次の2種類あります。
①普通地方公共団体:都道府県、市町村
②特別地方公共団体:特別区、地方開発事業団
この92条などで用いられている地方公共団体が具体的に何を指すかは、憲法には明記されていません。この点を巡り、①現在の都道府県・市町村という二段階制が憲法の要請するものか否か、また仮にそうであるとしたら府県をいくつかずつまとめた道州制の導入が許されるのか、②地方自治法上の普通公共団体はともかく、特別地方公共団体も憲法上の地方公共団体に当たるのか――が議論されています。
①については、主に2つの説があります。
➊二段階制は憲法上の要請ではなく、立法政策上の制度であるから、地方自治法の本旨に基づかないような地方公共団体の設置は認められないものの、二段階制を一段階制にすることも道州制をとり入れることも許される。
➋二段階制は憲法上の要請である。
②はさらに2つの説に分かれ、
A憲法は現在の都道府県・市町村という固定した二段階制を要請し、道州制は許されない。
B憲法は二段階制を要請しているが、どのような二段階制にするかについては立法政策上の問題であるから、地方自治の本旨に基づいた道州制は許される。

次に、条文にある地方自治の本旨とは、一般に次の2つの原則を指すものと解釈されています。
①住民自治:地方自治はその地域の住民の意思に基づいて行わなければならない。
②団体自治:地方自治は国から独立した団体に委ねられ、その団体自らの意思と責任の下で行わなければならない。
①の住民自治の原則は、憲法上、地方公共団体の長・議員は住民が直接選挙によって選ぶことや、条例の制定・改廃や地方公共団体の議員・長に対するリコール請求が認められていることなどが、示している民主主義的要素です。
②の団体自治の原則は、憲法上、地方公共団体に課税権が認められていることなどが、示している自由主義的要素です。

 

 

第九十三条  地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2  地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

 

 

Ⅱ.地方公共団体の機関とその直接選挙

93条で特筆すべきは、首長制の採用です。首長制というのは、議決機関としての議会と長とを、ともに住民の直接選挙で選び、住民の代表機関としてそれぞれの権限と責任とを分け、互いの均衡と調和を図る制度のことです。
国の政治を、間接民主制の一種である議院内閣制を採用しているのに対し、個々の国民にとってより身近である地方自治は首長制を採用して、相互に補完し合って民主主義をより充実させようという趣旨が読み取れます。
地方自治法では、長として都道府県には知事が、市町村には市町村長が置かれ、それぞれの任期は4年とされています。
また、地方自治でも、議事機関として議会が設置されます(1項)。地方議会は住民の代表機関で、中央の国会と同じような働きをします。ただし、議院内閣制の国会では内閣が国会のコントロールの下に置かれていますが、地方自治の長と地方議会は独立対等の関係にあります。
2項で、議会の構成員である議員を住民の直接選挙で選ぶこととした趣旨は、地方公共団体では直接民主制度を採用するのが妥当と考えられるからで、規模の小さい地方公共団体では、必ずしも議会を置く必要はなく、選挙権者自身によって構成される総会を議決機関とすることも可能であると解釈されています。地方自治法では、「町村では、条例に基づき、議会の代わりに町村総会を置くことができる」と規定しています。

 

 

外国人の地方参政権(最判平7.2.28)

事例

日本で生まれ育ち永住資格を有する外国人A は、憲法上、定住外国人にも地方公共団体に おける選挙権が保障されているとして、選挙 管理委員会に対し、選挙人名簿に登録するよ う求めた (*) が、これを却下された。そこ で、Aは、却下決定の取消しを求めて訴えを 提起した。 (*)選挙人名簿に登録されていない者は、選挙 権を行使することができない。

判例の 見解

①公務員の選定罷免権(15条1項)は、日 本に在留する外国人にも保障されるか。

憲法15条1項は、国民主権の原理に基づ き、公務員の終局的任免権が国民に存するこ とを表明したものにほかならないところ、主 権が「日本国民」に存するものとする憲法前 文及び1条の規定に照らせば、憲法の国民主 権の原理における国民とは、日本国民すなわ ち我が国の国籍を有する者を意味することは 明らかである。そうとすれば、公務員を選定 罷免する権利を保障した憲法15条1項の規 定は、権利の性質上日本国民のみをその対象 とし、右規定による権利の保障は、我が国に 在留する外国人には及ばない。 ②住民の地方参政権(憲法93条2項)は、 日本に在留する外国人にも保障されるか。

国民主権の原理及びこれに基づく憲法15 条1項の規定の趣旨に鑑み、地方公共団体が 我が国の統治機構の不可欠の要素を成すもの であることをも併せ考えると、憲法93条2 項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域 内に住所を有する日本国民を意味するものと 解するのが相当であり、右規定は、我が国に 在留する外国人に対して、地方公共団体の 長、その議会の議員等の選挙の権利を保障し たものということはできない。 ③法律で、日本に在留する外国人に地方参 政権を与えることは、憲法上禁止されてい るか。

我が国に在留する外国人のうちでも永住者 等であってその居住する区域の地方公共団体 と特段に緊密な関係を持つに至ったと認めら れるものについて、その意思を日常生活に密 接な関連を有する地方公共団体の公共的事務 の処理に反映させるべく、法律をもって、地 方公共団体の長、その議会の議員等に対する 選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法 上禁止されているものではない。

判例の POINT

①本判決は、定住外国人の地方参政権に関す るリーディングケースである。 ②本判決は、15条1項の「国民」、93条2 項の「住民」がいずれも「日本国民」のみを 意味することを明らかにした。 ③外国人に選挙権を与えることについては、 禁止説(憲法上禁止されており、法律で与え ることは違憲であるとする説)、要請説(憲 法上与えることが要請されており、与えてい ない現行法は違憲であるとする説)、許容説 (憲法は禁止も要請もしていないから、法律 で与えるか否かは国会の裁量に委ねられてい るとする説)がある。本判決は、許容説を 採っている。

特別区区長公選廃止事件(最大判昭 38.3.27)

事例

区議会議員Aは、区長選任に関して金品を収 受したことから、収賄罪で起訴された。しか し、第1審が特別区(東京都の23区)は憲法93 条2項の地方公共団体に当たるから、区長は 知事の同意を得て区議会が選任する旨の地方 自治法の規定は違憲無効であり、Aには収賄 罪の成立要件である職務権限が認められない として無罪を言い渡した。そこで、これを不 服とする検察官が最高裁に飛躍上告をした。

判例の 見解

①憲法上の地方公共団体といえるために は、どのような要件を満たす必要がある か。 憲法上の地方公共団体といえるためには、 単に法律で地方公共団体として取り扱われて いるということだけでは足らず、事実上住民 が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共 同体意識をもっているという社会的基盤が存 在し、沿革的にみても、また現実の行政の上 においても、相当程度の自主立法権、自主行 政権、自主財政権等地方自治の基本的機能を 付与された地域団体であることを必要とす る。 ②特別区は憲法93条2項の地方公共団体に 当たるか。

特別区は、その長の公選制が法律によって 認められていたとはいえ、憲法制定当時にお いても、昭和27年8月地方自治法改正当時 においても、憲法93条2項の地方公共団体 と認めることはできない。

判例の POINT

①区長の選任は、昭和27年の地方自治法改 正により、それまでの住民による直接選挙 (公選制)から知事の同意を得て区議会が選 任するという間接選挙に改められた。そこ で、特別区が憲法上の地方公共団体にあたる かという問題が生じた。憲法上の地方公共団 体にあたるとすれば、区長は憲住民の直接選 挙によって選任しなければならず、改正され た地方自治法の規定は違憲無効となるからで ある。本判決は、憲法上の地方公共団体に当 たるための要件を明らかにした上で、特別区 が憲法上の地方公共団体に当たらないと判断 した。 ②特別区が憲法上の地方公共団体に当たらな い以上、どのような方式で区長を選任するか は立法政策の問題ということになるが、現行 の地方自治法は、区長の公選制を復活させて いる

第九十四条  地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる

 

Ⅲ.地方公共団体の権能

地方公共団体の権能には①財産の管理、②事務の処理、③行政の執行、④条例の制定――の4つがあります。
かつては地方公共団体が行うべき事務の中に、地方行政の本来的に必要な事務のほかに、国から地方公共団体に委任された機関委任事務がありました。
機関事務においては、地方議会の権限は大幅に制限され、国の包括的な指揮監督が行われていたにもかかわらず、量的な割合は非常に大きく、地方自治の観点から問題視されていました。
そこで、平成11年に地方自治法が改正され、機関委任事務は廃止されました。現在の地方自治法では、地方公共団体の行うべき事務は自治事務と法定受託事務とされています。個々についは、後ほど詳しく解説するとして、そのいずれもが、国が地方公共団体に対して関与を及ぼす範囲が必要最小限のものとなるように制限されています。
今後も大きな流れとしては、地方分権の尊重に向かっていくと思われますが、地方自治団体が自主的財源を確保できるかなどの問題もあり、国と地方公共団体との権限の分配については、今後も変更されていくと思われますので、チェックが必要です。
ところで、条例とは、地方公共団体がその自治権に基づいて制定する自主法です。地方公共団体が制定する自主法には、①議会が制定する条例、②長が制定する規則、③各種委員会が制定する規程――がありますが、憲法94条2項に規定されている条例の範囲は、どれを指すのでしょうか?
通説では、①②③すべて認める最広義説が有力であるとされています。
一方、条例制定権は、次の4つの点で限界を論じられています。
①「法律の範囲内」の意味
②条例により地域間で取扱いに差を生じさせることの可否
③条例による財産権規制の可否
④条例で罰則を定めることの可否
まず、94条の明文上、条例の制定は法律の範囲内でのみ認められていることが分かります。ここで、よく問題になるのが、国の法令で定める基準よりも厳しい基準を定める条例(上乗せ条例と言います)や、国の法令では規制対象としていない事項について規制対象とする条例(横出し条例と言います)を定めることが「法律の範囲内」に当たるかどうかです。
この問題を語るときによくリーディングケースとなる「徳島県公安条例事件」を見ていきます。この事件は、徳島市の公安条例と道路交通法との関係が問題になった事件です。

判例では、問題になっている条例と法令の対象事項と規定文言を対比することは当然として、それぞれの趣旨・目的・内容・効果を比較して、両者の間に矛盾があるかどうかを視点として判断しなければならないとしています。
条例により地域間で取扱いに差を生じさせることの可否については、平等原則に反しないかが問われることになりますが、憲法が各地方公共団体に条例制定権を認めている以上、地域によって差別を生じることは当然に予測でき、この差別は憲法が容認していると言えるので、違憲ではないと解釈されています。
また、条例による財産権規制の可否については、憲法29条2項の「財産権の内容は、……法律でこれを定める」の解釈として条例を法律に含むかどうかが問われることになります。29条2項の趣旨は、国民の代表者である国会の定める法律でなければ国民の財産権を規制できないということですが、条例は住民の代表である地方議会によって制定されるものなので、地方自治の事務として処理することが適当な場合には、必要な限度で条例をもって財産権を規制することも許されると解釈されています。
さらに、条例で罰則を定めることの可否については、憲法31条の「法律の定める手続に…」と73条6号が政令で罰則を定めることを原則として禁じていることとの関係で、合憲性を問われる場合が生じます。判例によれば、条例は国の行政機関が定める命令とは異なり、住民の代表である地方議会が定めるものであるから、相当程度に具体的で限定された委任の状態であればよいとされています。

第九十五条  一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

 

Ⅳ.特別法についての住民投票

まず、条文中の「一の」の意味は特定のという意味です。ですから、必ずしも一つの地方公共団体である必要はありません。
95条の対象となる法律は地方特別法と呼ばれ、すでに存在している特定の地方公共団体に適用される法律です。具体的には、戦後一時アメリカ合衆国の領土であった小笠原諸島が日本の領土として復帰する際に「小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置法等に関する法律」が制定されましたが、これが制定された時点では、小笠原諸島が日本の法律上の地方公共団体になっていなかったので、95条は適用されず、住民投票の必要はありませんでした。
また、95条の趣旨は4つあります。
①国による地方自治権の侵害防止
②地方公共団体の個性の尊重
③地方公共団体の平等権の尊重
④地方行政における民意の尊重
95条の特別法の意味は、特定の地方公共団体の本質にかかわる不平等・不利益な特例を設ける法律のことを指します。
また、95条には、地方特別法の成立には、国会の可決のみではなく、適用を受ける地方公共団体の住民による投票の結果、過半数の賛成が必要と規定さているので、国会単独立法の原則の例外と言えます。

 

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