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1-1-18 法令科目 憲法 76条-81条/103条 司法

第六章 司法

 

第七十六条  すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2  特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3  すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

 

 

第七十七条  最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2  検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
3  最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

 

司法権の最後は裁判所に与えられた権能です。まず、①最高裁判所の規則制定権、次いで裁判所に与えられた大きな権限である②違憲審査権――を解説します。

Ⅰ.最高裁判所の規則制定権

77条1項では、最高裁判所が一定の事項については規則を定めることができることを規定し、3項では、下級裁判所に関する規則の制定は、下級裁判所に委任できることを規定しています。そしてこれを最高裁判所の規則制定権と言います。
この一定事項の規則とは、検察官や弁護士、訴訟関係人、裁判所の職員などを拘束する法規範のことです。
『ん…?』実質的な意味での立法作用であることに気付きましたね。このことは、国会中心立法の例外であると捉えてください。
裁判所の規則制定権が認められている事項には、4つあります。
①訴訟に関する手続
②弁護士に関する事項
③裁判所の内部規則に関する事項
④司法事務処理に関する事項
①の訴訟に関する手続には、民事訴訟・刑事訴訟・行政訴訟はもちろん、狭義では訴訟手続ではない、非訟事件手続、調停手続、家事審判――なども含まれると理解されています。
しかし、憲法76条1項や79条に定められている下級裁判所の設置に関する事項や最高裁判所裁判官の定員・国民審査・定年などの事項はもとより、裁判所の組織や構成、管轄権などは、裁判所の規則で定めることはできません。
②の弁護士に関する事項は、弁護士が直接、裁判所に関わる場合の事項のという意味です。裁判所には関係ない事項は弁護士法などで定められています。
③の裁判所の内部規律に関する事項とは、裁判官の執務時間や裁判所職員の人事など、内部の官吏や監督に関する事項のことです。
④の司法事務処理に関する事項とは、裁判事務に付随する、例えば法定を開く日時を決めることなどです。
これ以外の事項でも、法律で委任があれば新たに規則を制定することができることになっています。

では、この裁判所の規則と法律の関係はどうなっているのでしょう? ここには2つの問題が存在します。
一つは、77条1項で裁判所規則で定めることができるとされている4つの事項を法律でも定めることができるか。
もう一つは、定めることができた場合に、規則と法律が一致しなかったら、どちらが優先するかということです。
判例では、77条1項の裁判所規則で定めることができる事項は、法律でも定めることができることとなっています。そして、どちらを優先するかについては、①法律が優先するとする法律優位説、②規則が優先するとする規則優位説、③両者に優劣はなく「後法は前法を廃する」と言う一般原則に基づき、後で成立した規則なり法律なりを優先するとした同意説がありますが、この問題についての判例は存在せず、したがって疑問は疑問のまま残っています。
裁判所規則の制定は、最高裁判所の裁判官会議で決められます。下級裁判所が最高裁判所から委任を受けた場合には、その下級裁判所の裁判官会議で制定されます。
また、裁判所の規則の拘束力は、傍聴人を含めた裁判所内には及びますが、裁判所関係を離れた一般市民関係まで拘束するものではありません。
裁判所職員の人事に関する権限など、司法行政監督権については、特に明文規定されていませんが、77条が裁判所における規則制定権を認めていることや、司法権の独立の確保を重要なポイントとしている憲法第6章自体の趣旨などから、司法行政監督権も裁判所自体に与えられていて、自主的な運営に委ねられていると理解されています。

 

 

 

 

第七十八条  裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。

 

Ⅱ.裁判官の身分保障

78条では、裁判官の職権の独立をより実効性のあるものにするために、①一定の場合でなければ罷免されないこと、②行政機関は裁判官の懲戒処分を行えないこと――を定めています。
罷免とは、本人の意思に反して免官させることを言いますが、裁判官が罷免されるのは次の場合だけです。
①裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合
②公の弾劾による場合
③国民審査の結果、罷免を可とされた場合(最高裁判所裁判官のみ)
①の職務を執ることができない場合とは、裁判官の職務を遂行することができない程度の身体の故障や精神上の能力の喪失があって、相当長期に渡って職務が行えないことが確実に見込まれる場合のことを言います。一時的に具合が悪くても該当しません。また、この判断は、裁判で判断されますが、この裁判を「分限裁判」と呼び、裁判官分限法という法律が制定されています。
②の公の弾劾とは、弾劾裁判所による裁判(64条)のことです。64条で解説しましたが、復習を含めて罷免事由をもう一度確認すると次の2つです。
①職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠ったとき
②その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき
このほか、現行の裁判所法には、上記以外に裁判官の任命欠格事由を2つ規定しています。
③法律上一般の官吏に任命することができない者
④禁錮以上の刑に処せられた者
③、④の場合すぐに失職するのか、改めて弾劾裁判を行うのかは明記されていません。

 

 

第七十九条  最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
2  最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3  前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
4  審査に関する事項は、法律でこれを定める。
5  最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
6  最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

 

Ⅰ.裁判所の組織

裁判所は、憲法79条で定める最高裁判所と80条で定める下級裁判所に大別されます。最高裁判所は、79条1項に定められるとおり、長たる裁判官=最高裁判所長官と、法律で定める員数のその他の裁判官で構成されます。
現在の裁判所法では、その他の裁判官は14名とされているので、最高裁判所は15名の裁判官で構成されていると言えます。
最高裁判所の審理・裁判は、大法廷と小法廷のいずれかで行われますが、大法廷は15名全員の裁判官で、小法廷は5名の裁判官で構成されます。
最高裁判所の長官は憲法6条2項で、内閣が指名し天皇が任命することが規定されています。その他の裁判官は、内閣が任命することが79条1項に規定されています。長官に対する天皇の任命は形式的なものなので、最高裁判所の裁判官の実質的な任命権は、すべて内閣にあることになります。
憲法がこのような仕組みにしたのは、議院内閣制の下、国民を代表する国会を背景にした内閣が、最高裁判所の組織に一定の影響を与えることで、権力分立における均衡を維持しようとする意図がくみ取れます。
79条の2~4項は、最高裁判所裁判官に特有の罷免制度として国民審査制度を規定しています。この国民審査制度の趣旨は、内閣の恣意的な任命による弊害を防ぐ目的で、最高裁判所裁判官の任命に国民によるコントロールを及ぼすためです。
国民審査は、任命された個々の裁判官について、まず、任命後最初の衆議院議員総選挙の際に行われ、その後は、10年が経過するごとに、初めて行われる衆議院議員総選挙の際に行われます。その方法は、79条4項を受けて制定されている最高裁判所裁判官国民審査法に細かく規定されています。その方法は、審査の対象となる裁判官の氏名が記載された投票用紙に、投票者が罷免を求める場合には×印をつけるというもので、白票は積極的に罷免を求めていないとして罷免不可として扱われます。
その結果、×印の投票が過半数を超えた場合には、その裁判官は罷免されることになります(3項)。ただし、過去に国民審査で罷免された裁判官はいません。
最高裁判所裁判官には任期の規定がありませんが、79条5項には定年があることが規定されています。そして、裁判所法によれば、70歳が定年です。
また、6項では、最高裁判所裁判官は、定期的に相当額の報酬を受けることと、この報酬は減額されないことを規定しています。減額されないとは、例え、病気で欠勤しても、懲戒処分を受けても減給処分は受けないということです。この趣旨は、裁判官の身分を収入の面からも保障することで、裁判官の職権の独立を強化することにあります。

次に、下級裁判所について見てみます。
裁判所法では、下級裁判所の裁判官として、①高等裁判所長官、②判事、③判事補、④簡易裁判所判事補――の4種類を規定しています。これらの裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿に従って、内閣が任命することを憲法80条1項で定めています。高等裁判所長官については、特に天皇の認証事項にもなっています。内閣の任命とは、上記4種類の裁判官のいずれに就かせるかまでは行わず、具体的にどこの裁判所に配置するかは、司法行政の一環として最高裁判所が行います。
憲法が下級裁判所裁判官について最高裁判所の指名と内閣の任命を求めた趣旨は、①内閣による恣意的・政治的な任命を防ぎ、②裁判所内部だけの判断により私法が独善に陥ることを防ぐことにあります。
ここでは、最高裁による指名した者の任命を内閣が拒んだ場合に問題がありそうに思えますが、かつてそのような例はないとされています。
下級裁判所裁判官の任期は、80条1項に10年と規定されていますが、同時に再任制度も認めています。
下級裁判所裁判官の定年は、裁判所法で、原則65歳、簡易裁判所裁判官のみ70歳と定めています。また、報酬については最高裁判所裁判官と同じく、定期に相当額の報酬を受けること、報酬が在任中減額されないことが保障されています。

 

 

 

第八十条  下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
2  下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

 

第八十一条  最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

 

 

Ⅱ.違憲審査権

違憲審査権とは、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限です。違憲審査権を裁判所に与えた趣旨は、憲法の最高法規性を、裁判所が行う違憲審査によって担保し、つまりは国民の憲法上の自由や権利の実現を保障しようというものです。

1)違憲審査制の採用
立法府や行政府の制定した法規範や処分の合憲性を第三機関が判断する制度を違憲審査制と言いますが、一般に各国で採用されている違憲審査制は3つに分類できます。但し、近年では、3つの種類の間の違いがはっきりせず、区別が難しくなってきていると言われています。
①司法裁判所型:違憲審査のために特別の裁判所を置かず、通常の裁判所が、具体的な訴訟事件の中で、原則としてその解決に必要な限度で違憲審査を行います。日本、アメリカ合衆国、イギリス連邦諸国などで採用しています。
②憲法裁判型:通常の訴訟を扱う裁判所とは別の、違憲審査を行うための特別の裁判所を置き、具体的な訴訟とは無関係に、一般的・抽象的に違憲審査を行います。ドイツやオーストリア、イタリアなどで採用しています。
③政治機関型:裁判所ではなく、政治的な機関が違憲審査を行います。フランス第五共和制などがこれに当たります。

2)日本の違憲審査制の性質
それでは、日本の違憲審査制の性質を見てみましょう。
一般的に違憲審査の対象を見てみると、①一般的・抽象的な違憲審査も行う抽象的審査制と、②具体的な訴訟事件の解決に必要な限度のみで違憲審査を行う付随的審査制――とに大別できますが、日本の違憲審査制は②の付随的審査制を採っていると言われています。
その根拠は3つ挙げられます。
①沿革的に見て、日本の違憲審査制はアメリカ合衆国の違憲審査制に倣ったものである。
②司法権とは具体的な争訟事件を解決する作用であり、違憲審査制について定めた81条は、第6章司法の章に置かれている。
③抽象的審査は、伝統的に司法権の範囲を超えた特殊な作用であると考えられてきたので、もし憲法がそれを採用したのなら、その旨を明記するか何らかの手続き規定を置くはずなのに、そのような規定は置かれていない。
以上によると考えられています。
我が国の違憲審査制度について考察できる判例に「警察予備隊違憲訴訟」があります。

判例では、付随的審査制説を採用したのか否かは明示していませんが、抽象的審査制を否定している以上、付随的審査制を採用していると考えられています。
また、違憲審査権を行使する主体は最高裁判所であることは、81条から明らかですが、下級裁判所も違憲審査権を有しています。
その理由は、81条の条文は、最高裁判所は違憲審査を行う終審裁判所と定めているからです。つまり、下級裁判所が前審である違憲審査を行うことを予定しているのです。
また、判例も下級裁判所の違憲審査を認めています【食糧管理法違反事件:最判昭25.2.1】。

3)違憲審査の対象
81条では違憲審査の対象を一切の法律、命令、規則又は処分としているので、すべての国内の法規範と国家や地方公共団体による法規範が違憲審査の対象であることは間違いないのですが、国内法規とは言えない条約がその対象であるかは、議論のあるところです。
この問題の判例としては、日米安全保障条約の合憲性が論点とされた「砂川事件」があります。

判例では、日米安全保障条約の合憲性は、高度に政治的な問題であるから違憲審査の対象にならないとしたもので、条約だから違憲審査の対象にならないとは言っていません。
その意味で、条約も少なくとも理論的には違憲審査の対象になり得ると考えられています。言い換えれば、一見極めて明白に違憲無効であると認められる条約は違憲審査の対象であるということですが、現実には、そのような条約が締結されることはまず考えられないと言えます。
なお、この判例は、76条の統治行為論を採用した判例としても出題されることがあります。

次に立法不作為が違憲審査の対象となるかどうかが問われることがあります。立法不作為とは、憲法上立法することが求められているのに、国会が法律を制定しない、あるいは一応は制定したけれど、憲法の要求を充分に満たす内容となっていないことです。
一般的には、立法不作為も理論的には合憲・違憲の判断が可能な行為である限り、違憲審査の対象になると考えられています。
ただし、具体的な訴訟として立法不作為を問うことは、非常に難しいと言えます。例えば、「国会が立法することを義務付ける」という形で訴訟を起こせば、裁判所が立法行為に立ち入ることになり、憲法41条に反することになるので事実上不可能です。そのため、国会の立法不作為の合憲性を争うには、「国会が立法しないことは国会の不法行為であって、それにより損害を受けるから、国家賠償法に基づいて国家賠償を請求する」という国家賠償請求訴訟をとらざるを得ないことになります。
具体例を挙げると、「在宅投票制度廃止事件(最判昭60.11.21)」は、在宅投票制度が廃止された後、それに代わる制度を法律で制定しなかったため、国会の立法不作為は違憲・違法として賠償請求がなされましたが、判例では、国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにも関わらず国会があえて当該立法を行うというような簡単には想定できないような例外的な場合でない限り、国家賠償法上違法の評価はされないとしています。
この判例は国会の立法不作為の合憲性を争う手段を事実上閉じてしまったという批判を浴びました。
最近では、「立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにも拘らず…」という例外的な場合を柔軟に解釈して、国会の不作為行為が国家賠償法上違反であると判断された下級裁判判例【ハンセン病国家賠償訴訟:熊本地判平13.5.11】や最高裁判例【在外選挙制度不備事件:最判平17.9.14】などにより、国家賠償請求訴訟の形で国会の不作為の合憲性を争う途が開かれつつあります。

4)違憲審査基準
裁判所が法令や処分の違憲性を判断する場合の基準を違憲審査基準と言います。違憲審査基準は憲法や法律などで定められているのではなく、これまでの判例や学説の積み重ねの中から生まれてきました。
判例はどんな審査基準をとっているかは、人権の勉強の際、随時触れてきましたが、復習を兼ねて、次にまとめました。
学説は、二重の基準論を基礎に①精神的自由を規制する法令等についての違憲審査基準と、②経済的自由を規制する法令等についての違憲審査基準――とを大別して考えています。

★精神的自由を規制する法令等についての違憲審査基準
➊文面上無効の基準:問題となっている法令の文言だけから違憲判断を下すもの
➋明白かつ現在の基準:規制対象とされている表現行為が、実質的な害悪を引き起こす危険が明らかな場合以外は、その法令は違憲とする
➌LRAの基準:より制限が穏やかな他の手段によっても同じ目的を達成できるかどうかという視点から合憲性を判断し、他の手段があれば違憲、なければ合憲とする基準

★経済的自由を規制する法令等についての違憲審査基準
➊厳格な合理性の基準:立法目的が重要であること、目的と手段との間に実質的な関連性が認められればその法令等は合憲とするもの
➋明白性の原則:規制が著しく不合理であることが明白な場合に限り、その法令等を違憲とするもの

5)実際の処理
違憲判決後の処理については、規定されていません。しかし、今までに違憲判決が行われたケースでは、多くの場合、速やかに国会で法令の改正が行われています。また、民法の尊属殺重罰規定違憲判決は、違憲判決後20年以上も改正を怠った事件でしたが、その間は検察がその罪での起訴をしないという運用が定着していたので、違憲判決の効力の解釈を巡っての問題が生じたケースはありませんでした。

 

 

 

警察予備隊違憲訴訟(最大判昭27.10.8)

事例

Aは、憲法81条により最高裁判所には違憲 審査権が与えられており、具体的な訴訟にお いてでなくても、法令等の合憲性を争えるの は当然であるとして、警察予備隊(自衛隊の 前身)の設置・維持に関する国の一切の行為 は憲法9条に違反し無効であることの確認を 求める訴えを提起した。

判例の 見解

裁判所は、具体的な事件を離れて法令等の 合憲性を審査することができるか。

わが裁判所が現行の制度上与えられている のは司法権を行う権限であり、そして司法権 が発動するためには具体的な争訟事件が提起 されることを必要とする。わが裁判所は具体 的な争訟事件が提起されないのに将来を予想 して憲法及びその他の法律命令等の解釈に対 し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下 すごとき権限を行い得るものではない。なぜ なら、最高裁判所は法律命令等に関し違憲審 査権を有するが、この権限は司法権の範囲内 において行使されるものであり、この点にお いては最高裁判所と下級裁判所との間に異な るところはないからである。…要するにわが 現行の制度の下においては、特定の者の具体 的な法律関係につき紛争の存する場合におい てのみ裁判所にその判断を求めることができ るのであり、裁判所が具体的事件を離れて抽 象的に法律命令等の合憲性を判断する権限を 有するとの見解には、憲法上及び法令上なん らの根拠も存しない。

判例の POINT

①本件は、違憲審査制(81条)の法的性格 に関するリーディングケースである。 ②違憲審査権の法的性格に関しては、具体的 な事件を解決する限りにおいて違憲審査権を 行使できるとする付随的違憲審査制説、具体 的な事件を離れて違憲審査権を行使できると する抽象的違憲審査制説、法律で定めれば抽 象的違憲審査制を採ることも可能であるとす る法律説等が主張されている。本判決は、抽 象的違憲審査制説を否定する際に、「憲法上 及び法令上なんらの根拠も存しない」として いることから、法律説を採ったとみる余地も あるが、一般には、付随的違憲審査制説を採 ることを明らかにしたものと解されている。

 

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