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1-1-9 法令科目 憲法 22条-25条/103条 人権4

第二十二条  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2  何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

5回にわたって精神的自由権のうちの表現の自由を見てきましたが、今回は、憲法22条「居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍を離れることの自由」について解説します。

それでは、22条を①居住・移転の自由、②職業選択の自由、③海外渡航の自由、国籍離脱の自由――に分けて、その意義と制限があるのかを見ていきましょう。

Ⅰ.居住・移転の自由
居住・移転の自由とは、自分の住みたい場所に住所や住まいを自分で決めて、自分が住みたくないところに勝手に住所や住まいを変更されない――ということです。
一番上の図で、第22条が破線で囲まれているのに気が付きましたか?
実は、これには理由があります。居住・移転の自由には、次の3つの要素があるのです。
①いろいろなところに住んで多くの人と関わり人格を発展させるという精神的自由
②身体を拘束されないという人身の自由
③いろいろなところに住めることから経済的自由
つまり、憲法に記載されている3つの自由権の要素をすべて持っていることになります。私たちが暮らしていく上では何気なく引っ越しをしていますが、憲法上でも保障されていて、しかも大切な自由権の3つとも合わせ持っていることだなんて「すごい!!」と思いませんか? 日本に住む私たちには、あまりリアリティのない居住・移転の自由ですが、同じ民族が政治的に分断されている南北朝鮮や少し前の東西ドイツ「ベルリンの壁」などを思い起こせば、いかに大切な自由であるかが理解できると思います。
ところで、居住や移転が自由にできない人が日本にもいるってご存知ですか?
現在の法律では、①破産している人、②懲役や禁錮刑などの刑事罰で拘禁されている人、③特定の公務員(例えば、警察官や自衛隊員が限られた地域に住んでいなくてはならないこと)――などは、居住や移転が自由にできないのです。
そして、行政書士試験で問われるとしたら、これらの制約が合憲か違憲か――です。先ほども言ったように、居住・移転の自由にはいろいろな要素があるので、与えられた事案がどの自由としての側面に対する制約なのかをしっかり、判断して考えなければなりません。例えば、②の刑事罰による拘禁は、人身の自由に対する制約と言えますから、厳格な違憲審査基準で合憲性を判断することになりますが、まさに公共の福祉に反する場合と言えますね。危ない刑事犯を好きなように住まわすことは、他の一般の人にとってとても迷惑だから、制限されていいわけです。

Ⅱ.職業選択の自由
職業選択の自由とは、自分の職業を自分で決めてその職業に就いていい――ということで経済的自由権の一つです。職業に就いていい自由の中でも、営利を目的とする継続的で自主的な活動を行う「営業の自由」については22条で保障されるのかどうかについて説が分かれていますが、判例では、営業の自由も22条1項で保障されていることになっています。
さて、この職業選択の自由の制限は、思想・良心の自由や精神的自由に比べて、強い制限が許されています。
その制限には主に次の2つがあると判例で示されています。
①社会生活での公共の安全と秩序の維持から見た内在的な制約
②福祉国家理念の実現から見た政策的な制約
職業選択の自由でもその制限が合憲か違憲かが問われることになりますが、その審査基準は、制約の目的が①の公共の安全と秩序の維持にある場合には、厳格な合理性の基準が、②の福祉国家理念の実現にある場合には、明白性の原則がとられています。
①の厳格な合理性の基準とは、とられた規制より緩い制約で規制の目的を十分に達せられると判断されたらその規制は違憲だという基準です。
②の明白性の原則とは、規制が普通に考えて合理的でないということが明白でない限り、その規制は合憲だという基準です。このことで違憲審査することを「規制目的二分論」と言いますので覚えてくださいね。
ここで2つの判例を見てみましょう。1つは、厳格な合理性の基準で違憲になった事件、1つは、明白性の原則で合憲になった事件です。
では、まず違憲となった「薬局距離制限事件」は、薬剤師のXさんが、薬局を開こうとしたところ、薬事法の規定にある距離制限や県の条例により、薬局開設の許可を得られませんでした。そこで、Xさんは、距離制限を定める薬事法や、条例が憲法22条に違反するとして出訴した事件です。

この事案では、薬事法に薬局開設における距離制限を設けた立法時の意図は何だったのかが問われました。そして、その意図は、薬局が乱立して競争が激化すると、互いに経営を圧迫し、集客維持のために安い不良薬品の供給に走る可能性があるから規制しよう、というもの。これは、①の公共の安全の秩序と維持から見た内在的制約に当たり、最高裁は、立法時に想定したような因果関係が必ず成立するとは言えず、むしろ既存の店を過当に保護し、結果的に新規参入を阻害する要因となり、それこそ進歩の妨げ、資本主義の前提である自由競争を不当に制限していると考えて、違憲という判断を下しました。
次に、合憲となった「小売市場事件」を見てみます。この事件は、市場経営を行う会社A(社長B)が、小売商業調整特別措置法3条1項の規定に反して大阪府知事の許可を受けずに平屋建て一棟を建設して、小売市場とするために野菜商4店舗、生鮮魚介類商3店舗を含む49店舗を小売商人に貸付けたため、AとBが起訴された事件で、A(B)は、小売商業調整特別措置法3条1項の小売市場の許可規制は、小売市場業者の営業行為を不当に制限し、既存業者を保護する偏ったものであるとして、憲法22条1項に違反するのではないかと争った事件です。

この事案においては、政策的判断が大きく働くため、司法権は判断材料も判断能力も優れていないことから、立法権の判断をより尊重すべきであるという、②の明白性の原理を採用して、法律は合憲と判断しました。
このほか法の規制を合憲とした判例に、「公衆浴場距離制限事件(最大判昭30.1.26)」と「酒類販売免許制事件(最判平4.12.15)」があります。

Ⅲ.海外渡航の自由、国籍離脱の自由
海外渡航とは、狭い意味では一時的な海外旅行を指し、広い意味では外国に移住することを含みます。憲法22条は、国内関連を1項で、国外関連を2項でまとめて保障したと言えます。
また、2項の規定は、日本国籍を離脱する保障もしています。ただし、国籍を離脱することは無条件で保障していますが、無国籍になることの自由を認めているわけではありません。ですから、日本国籍を離脱するときは、必ず他の国の国籍を取得することが必要条件と言えます。

福島県青少年健全育成条例事件(最判平 21.3.9)
事例

福島県青少年健全育成条例は、青少年の健全 な育成を図るため、18歳未満の者(青少 年)に知事が指定した有害図書を販売するこ と及び自動販売機に有害図書を収納すること を禁止している。自動販売機業者Aは、監視 機能の付いた自動販売機(販売機を設置した 無人小屋に客が入ると、監視カメラが作動 し、監視センターに客の画像が送信され、監 視員が18歳以上と判断した場合に販売機の 電源が入り、購入可能な状態となる自動販売 機)まで規制することは、憲法21条1項、 22条1項、31条に違反すると主張した。

判例の 見解

監視機能付き自動販売機の設置を規制する ことは、憲法21条1項、22条1項、31条に 違反するか。

自動販売機によって有害図書類を販売する ことは、売手と対面しないため心理的に購入 が容易であること、昼夜を問わず販売が行わ れて購入が可能となる上、どこにでも容易に 設置でき、本件のように周囲の人目に付かな い場所に設置されることによって、一層心理 的規制が働きにくくなると認められることな どの点において、書店等における対面販売よ りもその弊害が大きい。本件のような監視機 能を備えた販売機であっても、その監視及び 販売の態勢等からすれば、監視のための機器 の操作者において外部の目にさらされていな いために18歳未満の者に販売しないという 動機付けが働きにくいといった問題があるな ど、青少年に有害図書類が販売されないこと が担保されているとはいえない。 以上の点 からすれば、本件機器を含めて自動販売機に 有害図書類を収納することを禁止する必要性 が高いということができる。その結果、青少 年以外の者に対する関係においても、有害図 書類の流通を幾分制約することにはなるが、 それらの者に対しては、書店等における販売 等が自由にできることからすれば、有害図書 類の「自動販売機」への収納を禁止し、その 違反に対し刑罰を科すことは、青少年の健全 な育成を阻害する有害な環境を浄化するため の必要やむを得ないものであって、憲法21 条1項、22条1項、31条に違反するもので はない。

判例の POINT

条例で自動販売機による有害図書の販売・収 納を禁止し、違反者に罰則を科すことについ ては、①青少年の知る自由(21条1項)を 侵害するか、②成人の知る自由を侵害する か、③知事による有害図書の指定が検閲(同 条2項前段)に当たるか、④自動販売機設置 者の営業の自由(22条1項)を侵害する か、④定義があいまいな有害図書の販売・収 納を理由に処罰することは31条に違反する か等さまざまな憲法問題が生じる。しかし、 すでに最高裁は、監視機能の付いていない自 動販売機について、これらの問題点を否定し ていた(後掲岐阜県青少年保護育成条例事 件)。本判決は、監視機能が付いている自動 販売機にも従来の判例の立場が妥当すること を明らかにした。 (トップへ)

チェック判例

□ 新聞社が通信社から配信を受けて自己の発行 する新聞紙にそのまま掲載した記事が私人の犯罪 行為やスキャンダルないしこれに関連する事実を 内容とするものである場合には、当該記事が取材 のための人的物的体制が整備され、一般的にはそ の報道内容に一定の信頼性を有しているとされる 通信社から配信された記事に基づくものであると の一事をもって、当該新聞社に同事実を真実と信 ずるについて相当の理由があったものとはいえな い(最判平14.1.29)。

あん摩、はり、きゅう等の業務又は施術所に 関して制限を設け、適応症の広告も許さないの は、もしこれを無制限に許容すると、虚偽誇大に 流れ、一般大衆を惑わすおそれがあり、その結果 適時適切な医療を受ける機会を失わせるような結 果を招来することをおそれたためであって、この ような弊害を未然に防止するため一定事項以外の 広告を禁止することは、国民の保健衛生上の見地 から、公共の福祉を維持するためやむをえない措 置として是認されるから、憲法21条に違反しな い(最大判昭36.2.15)。

有害図書の自動販売機への収納の禁止は、青 少年に対する関係において、憲法21条1項に違反 しないことはもとより、成人に対する関係におい ても、有害図書の流通を幾分制約することにはな るものの、青少年の健全な育成を阻害する有害環 境を浄化するための規制に伴う必要やむをえない 制約であるから、憲法21条1項に違反するもので はない(最判平1.9.19)。

刑法175条の「猥褻文書」とは、その内容がい たずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通 人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観 念に反する文書をいう。性的秩序を守り、最少限 度の性道徳を維持することが公共の福祉の内容を なすことについて疑問の余地はないから、猥褻文 書の頒布販売を犯罪として禁止する刑法175条は憲 法に違反しない(最大判昭32.3.13)。

芸術的・思想的価値のある文書が猥褻性を持 つものである場合には、性生活に関する秩序及び 健全な風俗を維持するため、これを処罰の対象と することは、国民生活全体の利益に合致するもの と認められるから、憲法21条に違反しない(最大 判昭44.10.15)。

文書のわいせつ性の判断にあたっては、当該 文書の性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度と その手法、右描写叙述の文書全体に占める比重、 文書に表現された思想等と右描写叙述との関連 性、文書の構成や展開、さらには芸術性・思想性 等による性的刺激の緩和の程度、これらの観点か ら当該文書を全体としてみたときに、主として、 読者の好色的興味にうったえるものと認められる か否かなどの諸点を検討することが必要であり、 これらの事情を総合し、その時代の健全な社会通 念に照らして、それが「いたずらに性欲を興奮又 は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心 を害し、善良な性的道義観念に反するもの」とい えるか否かを決すべきである。(最判昭 55.11.28)。

小売市場距離制限事件(最大判昭 47.11.22)

事例

小売商業調整特別措置法は、小売市場(10 以上の小売商がテナントとして入る1つの建 物)を開設するには、都道府県知事の許可と 他の小売市場と一定の距離を置くこと(距離 制限)が必要であるとしているが、Aは、知 事の許可を受けないで小売市場を開設したた め、同法違反で起訴された。そこで、Aは、 小売市場の許可制及び距離制限は営業の自由 を制約するから憲法22条1項に違反すると 主張した。

判例の 見解

①憲法22条1項は、営業の自由を保障して いるか。

憲法22条1項は、国民の基本的人権の一 つとして、職業選択の自由を保障しており、 そこで職業選択の自由を保障するというなか には、広く一般に、いわゆる営業の自由を保 障する趣旨を包含している。 ②社会経済政策を実施するために個人の経 済活動に規制を加えることは許されるか。

憲法22条1項に基づく個人の経済活動に 対する法的規制は、個人の自由な経済活動か らもたらされる諸々の弊害が社会公共の安全 と秩序の維持の見地から看過することができ ないような場合に、消極的に、かような弊害 を除去ないし緩和するために必要かつ合理的 な規制である限りにおいて許されるべきこと はいうまでもない。のみならず、憲法は、福 祉国家的理想のもとに、社会経済の均衡のと れた調和的発展を企図しており、その見地か ら、すべての国民にいわゆる生存権を保障 し、その一環として、国民の勤労権を保障す る等、経済的劣位に立つ者に対する適切な保 護政策を要請している。このような点を総合 的に考察すると、憲法は、国の責務として積 極的な社会経済政策の実施を予定しているも のということができ、個人の経済活動の自由 に関する限り、個人の精神的自由等に関する 場合と異なって、社会経済政策の実施の一手 段として、これに一定の合理的規制措置を講 ずることは、もともと、憲法が予定し、か つ、許容するところと解する。 ③経済活動の自由を規制する立法の違憲審 査基準 社会経済の分野において、法的規制措置を 講ずる必要があるかどうか、その必要がある としても、どのような対象について、どのよ うな手段・態様の規制措置が適切妥当である かは、主として立法政策の問題として、立法 府の裁量的判断にまつほかはない。…裁判所 は、立法府の裁量的判断を尊重するのを建前 とし、ただ、立法府がその裁量権を逸脱し、 当該法的規制措置が著しく不合理であること の明白である場合に限って、これを違憲とし て、その効力を否定することができる。 ④小売市場の許可制は憲法22条1項に違反 するか。

小売商業調整特別措置法は、中小企業保護 政策の一環として成立したものであり、小売 市場を許可規制の対象としているのは、小売 商が国民のなかに占める数と国民経済にける 役割とに鑑み、経済的基盤の弱い小売商の事 業活動の機会を適正に確保し、かつ、小売商 の正常な秩序を阻害する要因を除去する必要 があるとの判断のもとに、その一方策とし て、小売市場の乱設に伴う小売商相互間の過 当競争によって招来されるであろう小売商の 共倒れから小売商を保護するためにとられた 措置であり、一般消費者の利益を犠牲にし て、小売商に対し積極的に流通市場における 独占的利益を付与するためのものではない。 しかも、本法は、過当競争による弊害が特に 顕著と認められる場合についてのみ、これを 規制する趣旨であることが窺われる。これら の諸点からみると、小売市場の許可規制は、 国が社会経済の調和的発展を企図するという 観点から中小企業保護政策の一方策として とった措置ということができ、その目的にお いて、一応の合理性を認めることができない わけではなく、また、その規制の手段・態様 においても、それが著しく不合理であること が明白であるとは認められない。したがっ て、小売市場の許可規制は憲法22条1項に 違反しない。

判例の POINT

①本判決は、営業の自由が憲法22条1項で 保障されていることを明確に認めている。 ②本判決は、経済活動の規制には、社会公共 の安全と秩序の維持の見地からする規制(消 極目的規制)と福祉国家の理想に基づく規制 (積極目的規制)があることを明らかにして いる。 ③本判決は、積極目的規制の合憲性は、立法 府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置 が著しく不合理であることの明白である場合 に限って、これを違憲とする「明白(性)の 原則」によって判断すべきであるとしてい る。 ④本判決は、小売市場の許可制を経済的基盤 の弱い小売商を過当競争による共倒れから保 護するという積極目的規制であると認定し、 明白(性)の原則に当てはめて合憲としてい る。

関連判例

公衆浴場距離制限事件(最判平1.1.20)【過去 問】21-4 公衆浴場の適正配置規制と距離制限規定は、憲法 22条1項に違反するか。

公衆浴場業者が経営の困難から廃業や転業をす ることを防止し、健全で安定した経営を行えるよ うに種々の立法上の手段をとり、国民の保健福祉 を維持することは、まさに公共の福祉に適合する ところであり、適正配置規制及び距離制限も、そ の手段として十分の必要性と合理性を有してい る。このような積極的、社会経済政策的な規制目 的に出た立法については、立法府のとった手段が その裁量権を逸脱し、著しく不合理であることの 明白な場合に限り、これを違憲とすべきであると ころ、適正配置規制及び距離制限がその場合に当 たらないことは、多言を要しない。 本件は、公衆浴場を新たに開設する には、既存の公衆浴場と一定の距離を置かなけれ ばならないとする公衆浴場法の適正配置規制及び それに基づく条例の距離制限規定の合憲性が争わ れた事案である。最高裁は、適正配置規制と距離 制限規定の立法目的を公衆浴場業者の保護という 積極目的と捉え、明白の原則を適用して合憲と判 断した。しかし、本判決の直後に出された最判平 1.3.7は、適正配置規制の目的を国民の保健及び環 境衛生の確保という消極目的と公衆浴場業者の保 護という積極目的の両者にあると捉えた上で、合 理性の基準を適用して合憲としている。

薬局距離制限事件(最大判昭50.4.30)

事例

Aは、自己の経営する店舗で医薬品の販売を するために必要な許可申請をしたところ、既 存の薬局と一定の距離を置かなければ薬局を 開設できないとする薬事法の距離制限規定に 反するとして不許可処分を受けた。そこで、 Aは、当該距離制限規定は、憲法22条1項 に違反すると主張して処分の取消しを求め た。

判例の 見解

①職業の自由の規制 職業は、…その規制を要求する社会的理由 ないし目的も、国民経済の円満な発展や社会 公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社 会政策及び経済政策上の積極的なものから、 社会生活における安全の保障や秩序の維持等 の消極的なものに至るまで千差万別で、その 重要性も区々にわたる。…それ故、規制措置 が憲法22条1項にいう公共の福祉のために 要求されるものとして是認されるかどうか は、これを一律に論ずることができず、具体 的な規制措置について、規制の目的、必要 性、内容、これによって制限される職業の自 由の性質、内容及び制限の程度を検討し、こ れらを比較考量したうえで慎重に決定されな ければならない。この場合、右のような検討 と考量をするのは、第一次的には立法府の権 限と責務であり、裁判所としては、規制の目 的が公共の福祉に合致するものと認められる 以上、そのための規制措置の具体的内容及び その必要性と合理性については、立法府の判 断がその合理的裁量の範囲にとどまるかぎ り、立法政策上の問題としてその判断を尊重 すべきものである。しかし、右の合理的裁量 の範囲については、事の性質上おのずから広 狭がありうるのであって、裁判所は、具体的 な規制の目的、対象、方法等の性質と内容に 照らして、これを決すべきものといわなけれ ばならない。 ②職業に対する消極目的規制の違憲審査基 準 一般に許可制は、単なる職業活動の内容及 び態様に対する規制を超えて、狭義における 職業の選択の自由そのものに制約を課するも ので、職業の自由に対する強力な制限であ るから、その合憲性を肯定しうるためには、 原則として、重要な公共の利益のために必要 かつ合理的な措置であることを要し、また、 それが社会政策ないしは経済政策上の積極的 な目的のための措置ではなく、自由な職業活 動が社会公共に対してもたらす弊害を防止す るための消極的、警察的措置である場合に は、許可制に比べて職業の自由に対するより ゆるやかな制限である職業活動の内容及び態 様に対する規制によっては右の目的を十分に 達成することができないと認められることを 要する。そして、この要件は、許可制そのも のについてのみならず、その内容についても 要求されるのであって、許可制の採用自体が 是認される場合であっても、個々の許可条件 については、更に個別的に右の要件に照らし てその適否を判断しなければならない。 ③薬局の許可制は、消極目的の規制か。

医薬品は、国民の生命及び健康の保持上の 必需品であるとともに、これと至大の関係を 有するものであるから、不良医薬品の供給か ら国民の健康と安全とを守るために、業務の 内容の規制のみならず、供給業者を一定の資 格要件を具備する者に限定し、それ以外の者 による開業を禁止する許可制を採用したこと は、それ自体としては公共の福祉に適合する 目的のための必要かつ合理的措置として肯認 することができる。 ④薬局の距離制限規制(適正配置規制) は、消極目的規制か。

適正配置規制は、主として国民の生命及び 健康に対する危険の防止という消極的、警察 的目的のための規制措置であり、そこで考え られている薬局等の過当競争及びその経営の 不安定化の防止も、それ自体が目的ではな く、あくまでも不良医薬品の供給の防止のた めの手段であるにすぎない。 ⑤薬局の距離制限規制は、憲法22条1項に 違反するか。

薬局等の設置場所についてなんらの地域的 制限が設けられない場合、薬局等が都会地に 偏在し、これに伴ってその一部において業者 間に過当競争が生じ、その結果として一部業 者の経営が不安定となるような状態を招来す る可能性があることは容易に推察しうる。し かし、不良医薬品の販売の現象を直ちに一部 薬局等の経営不安定、特にその結果としての 医薬品の貯蔵その他の管理上の不備等に直結 させることは、決して合理的な判断とはいえ ない。したがって、薬局の距離制限規制は、 不良医薬品の供給の防止等の目的のために必 要かつ合理的な規制を定めたものということ ができないから、憲法22条1項に違反し、 無効である。

判例の POINT

①本判決は、職業の自由に対する規制は多種 多様であり、その合憲性を一律に論じること はできないことを前提とした上で、一般論と して、許可制の合憲性判定基準に言及してい る。 ②許可制の違憲審査基準について、本判決 は、消極目的規制と積極目的規制を区別した 上で、消極目的規制の場合は、許可制に比べ てよりゆるやかな制限である職業活動の内容 及び態様に対する規制によって立法目的を十 分に達成することができないか否かを審査す べきであるとしている。この基準は、「厳格 な合理性の基準」と呼ばれている。 ③薬局の距離制限規制の合憲性について、本 判決は、これを不良医薬品の供給を防止して 国民の生命・健康を守るという消極目的規制 ととらえ、距離制限をしないと、「薬局の偏 在⇨競争激化⇨一部薬局の経営の不安定⇨不 良医薬品の供給の危険」という因果関係が生 じるとはいえないこと、また、不良医薬品の 供給防止は、薬事法による誇大広告の規制や 一般消費者に対する啓蒙の強化といった方法 でも実現可能であること等から違憲無効とし ている。

関連判例

酒類販売免許制事件(最判平4.12.15)【過去 問】21-4 ①酒類販売業の免許制は憲法22条1項に違反する か。

酒税法が酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図 るという国家の財政目的のために、酒類販売業の 免許制を採用したことは、当初は、その必要性と 合理性があった。そして、その後の社会状況の変 化と租税法体系の変遷に伴い、酒税の国税全体に 占める割合等が相対的に低下するに至った本件処 分当時の時点においてもなお、酒類販売業につい て免許制度を存置しておくことの必要性及び合理 性は失われていない。加えて、酒税は、本来、消 費者にその負担が転嫁されるべき性質の税目であ ること、酒類の販売業免許制度によって規制され るのが、そもそも、致酔性を有する嗜好品である 性質上、販売秩序維持等の観点からもその販売に ついて何らかの規制が行われてもやむを得ないと 考えられる商品である酒類の販売の自由にとどま ることをも考慮すると、当時においてなお酒類販 売業免許制度を存置すべきものとした立法府の判 断が、政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するも ので、著しく不合理であるということはできな い。したがって、酒類販売業の免許制は、憲法22 条1項に違反しない。 酒類販売業の免許制の合憲性を判断 するにあたり、本判決は、かかる制度が立法裁量 を逸脱し、著しく不合理であるか否かを問題とし ている。これは、「明白(性)の原則」を連想さ せるが、本判決は、明白(性)の原則を採用した 小売市場距離制限事件を踏襲しているわけではな い。

131 帆足計事件(最大判昭33.9.10)

事例

元参議院議員A(帆足計)は、モスクワで開 催される国際経済会議に出席するため、外務 大臣に対しソ連(現ロシア)行きの旅券(パ スポート)発給を申請したところ、旅券法の 「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を 害する虞(おそれ)があると認めるに足りる 相当の理由がある者」に該当するとして、発 給を拒否した。そこで、Aは、発給拒否は憲 法の保障する海外旅行の自由を奪うものであ ると主張し、国家賠償を求める訴えを提起し た。

判例の 見解

①憲法22条2項は、外国旅行の自由を保障 しているか。

憲法22条2項の「外国に移住する自由」 には外国へ一時旅行する自由をも含む。 ②旅券法による海外旅行の自由の制限は、 憲法に違反するか。

外国旅行の自由といえども無制限のままに 許されるものではなく、公共の福祉のために 合理的な制限に服するものと解すべきであ る。そして旅券発給を拒否することができる 場合として、旅券法13条1項5号が「著し く且つ直接に日本国の利益又は公安を害する 行為を行う虞があると認めるに足りる相当の 理由がある者」と規定したのは、外国旅行の 自由に対し、公共の福祉のために合理的な制 限を定めたものとみることができ、所論のご とく右規定が漠然たる基準を示す無効のもの であるということはできない。されば右旅券 法の規定に関する所論違憲の主張は採用でき ない。

判例の POINT

①本判決は、海外旅行の自由が憲法上保障さ れた人権であることを認めたリーディング・ ケースである。 ②海外旅行の自由の憲法上の根拠について は、13条の幸福追求権の1つとする見解や22 条1項の「移転の自由」に含まれるとする見 解もあるが、本判決は、22条2項の「外国 に移住する自由」に含まれるとした。本判決 の見解によると、22条1項は国内での移動 を保障し、2項は外国への移動を保障した規 定ということになる。

チェック判例

司法書士法73条1項、78条1項は、登記制度 が国民の権利義務等社会生活上の利益に重大な影 響を及ぼすものであることなどにかんがみ、法律 に別段の定めがある場合を除き、司法書士及び公 共嘱託登記司法書士協会以外の者が、他人の嘱託 を受けて、登記に関する手続について代理する業 務及び登記申請書類を作成する業務を行うことを 禁止し、これに違反した者を処罰することにした ものであって、右規制は公共の福祉に合致した合 理的なもので憲法22条1項に違反しない(最判平 12.2.8)。

農業災害補償法が水稲等の耕作の業務を営む 者でその耕作面積が一定の規模以上ものについて 農業共済組合への当然加入を定めた趣旨は、国民 の主食である米の生産を確保するとともに、水稲 等の耕作をする自作農の経営を保護するという目 的を実現するため、被災する可能性のある農家を なるべく多く加入させて危険の有効な分散を図る とともに、危険の高い者のみが加入するという事 態を防止するため、原則として全国の米作農家を 加入させたところにある。かかる当然加入制は、 職業の遂行それ自体を禁止するものではなく、職 業活動に付随して、その規模等に応じて一定の負 担を課するという態様の規制であること等に照ら すと、立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸 脱するもので著しく不合理であることが明白であ るとは認めがたい(最判平17.4.26)。

外国産生糸の輸入を政令で定める者に限って 認める一元輸入措置と輸入生糸の売渡し方法、売 渡価格等を規制する生糸価格安定制度は、営業の 自由に対し制限を加えるものではあるが、国家賠 償法1条1項の適用上違法の評価を受けるもので はない(最判平2.2.6)

第二十三条  学問の自由は、これを保障する。

今回は、憲法23条「学問の自由」について解説します。

では、①学問の自由の内容、②大学の自治、③警察権と関係――に分けて勉強しましょう。

さて、外国の憲法において、学問の自由を独立した条文として謳っている例は、ほとんどありません。我が国の憲法を見ても、19条の思想・良心の自由や21条の表現の自由で保障する内容に含まれると言っても差支えありません。それなのに、なぜ一つの条文を設けて学問の自由を保障しているのでしょう?
それは、我が国の歴史上で、学問の自由が弾圧の対象となることが多かったことに他なりません。具体例を挙げれば、明治憲法下での「滝川事件」や「天皇機関説事件」です。具体的にどんな事件だったのかは、今回の最後にまとめますので、「ぶれいく・たいむ」をご覧になってください。

Ⅰ.学問の自由の内容
一般的に、学問の自由の内容には、次の4つがあると言われています。
①学問研究の自由
②学問研究の結果を発表する自由
③大学における教授の自由
④大学の自治
①については、思想・良心の自由、②については表現の自由に含まれることが分かりますね?
③の教授の自由については、大学における教授の自由が認められているということは明らかなので問題ないのですが、では、小学校や中学校の先生も自由に児童や生徒に教えていいのでしょうか?
これについては、次の判例を見てみましょう。
この「旭川学力テスト事件」は、初等教育機関における普通教育の自由の保障についての一つの指針となっている事件です。その内容は、全国の中学2・3年生を対象に実施された全国中学校一斉学力テストに反対する教師A(被告人)が、教鞭をとる旭川市立永山中学校で、テストの実力阻止を行い、公務執行妨害罪などで起訴されました。

最高裁の判例は、この事件について、小学校や中学校の義務教育では、一定の範囲での教授の自由は認められるものの、教育の機会均等と全国的な教育水準の確保などの観点から、大学と同じように完全な教授の自由は認められない――としています。そこで、同時に争われた、学力テストを行わせた国の行為は合憲と判断されました。

Ⅱ.大学の自治
大学の自治とは、大学の内部組織や運営に関しては、大学の自主的な運営に任せることを保障していることです。23条を含め、大学の自治の自由を明記している条文は憲法にはありません。でも、学問の自由は、最高学府である大学の自治と分けて考えることはできないという理由で、学問の自由を謳っている23条で大学の自治が保障されていると理解されています。
大学の自治の具体的な意味は、一定の範囲内の事項は大学が自主的に、公権力の干渉を受けることなく決定できるということです。
では、一定の範囲とはどんなことかというと、通説では次の3つのことです。
①学長・教授その他の研究者の人事
②大学の施設の管理
③学生の管理
「東大ポポロ事件」の判例では、①は当然認められていますが、②③については「ある程度」認められるとしています。この事件は、次の警察権との関係での焦点となる事件ですので、そこで、詳しく解説します。

Ⅲ.警察権との関係
大学の自治については、特に昭和20~40年代にかけてのいわゆる学園紛争の時代に、警察権との関係で多くの問題が発生しました。特に先にも挙げた「東大ポポロ事件」は、東京大学の構内で大学公認の学生団体「ポポロ劇団」が大学の許可を得て開催した演劇発表会の観客席に、学生の情報収集のために潜んでいた私服警察官が、学生たちに発見されて逃げようとしましたが、学生たちに掴まえられたうえ警察手帳を奪われてしまい、学生たちが暴力行為等処罰法違反で起訴された事件です。

この事件で、第一審・第二審は、大学の自由を重視し、大学内の秩序の維持は緊急やむを得ない場合を除いて、第一次的には大学学長の責任において行うべきものだから、警察官が大学に立ち入って大学の自治を侵す不当な行為を行ったことを阻止する学生の行為は、罪にならないとしました。ところが、上告審では一転、この場合の学生の集会は、大学の学問的研究ではないから、大学の自治の範囲外であるとして学生を有罪としたのです。
裁判から見ても分かるように、意見は分かれるところですが、行政書士試験においては、最高裁の判例を覚えてください。

第二十四条  婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2  配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

憲法24条は、継続的な夫婦関係を全体として 観察した上で、婚姻関係における夫と妻とが実質 上同等の権利を享有することを期待した趣旨の規 定と解すべく、個々具体の法律関係において、常 に必ず同一の権利を有すべきものであるというま での要請を包含するものではない。したがっ て、夫婦の一方が婚姻中自己の名で得た財産はそ の特有財産とすると定める民法762条1項は憲法24 条に違反しない(最大判昭36.9.6)

第二十五条  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2  国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

【生存権】

朝日訴訟(最大判昭42.5.24)
事例

国立療養所で療養生活を送っていたAは、生 活保護法に基づいて生活扶助の給付を受けて いたが、実兄Bから仕送りを受けるように なった。そこで、社会福祉事務所長は、生活 扶助を廃止し、仕送りから生活扶助相当額を 控除した残額を医療費の自己負担分としてA に負担させた。Aは、不服申立てをしたが却 下裁決を受けたため、国を相手取って裁決取 消訴訟を提起し、生活扶助の基準金額は憲法 25条1項の「健康で文化的な最低限度の生 活」を維持するに足りない違法なものである と主張したが、訴訟係属中に死亡した。

判例の 見解

①生活保護法に基づいて国から生活保護を 受ける権利(保護受給権)は、相続の対象 となるか。

この権利は、被保護者自身の最低限度の生 活を維持するために当該個人に与えられた一 身専属の権利であって、他にこれを譲渡し得 ないし、相続の対象ともなり得ない。 ②生存権は具体的な権利か。

憲法25条1項は、すべての国民が健康で 文化的な最低限度の生活を営み得るように国 政を運営すべきことを国の責務として宣言し たにとどまり、直接個々の国民に対して具体 的権利を賦与したものではない。具体的権利 としては、憲法の規定の趣旨を実現するため に制定された生活保護法によって、はじめて 与えられているというべきである。 ③「健康で文化的な最低限度の生活」の判 断は、厚生労働大臣の裁量に委ねられてい るか。

健康で文化的な最低限度の生活なるもの は、抽象的な相対的概念であり、その具体的 内容は、文化の発達、国民経済の進展に伴っ て向上するのはもとより、多数の不確定的要 素を綜合考量してはじめて決定できるもので ある。したがって、何が健康で文化的な最低 限度の生活であるかの認定判断は、いちお う、厚生大臣(現厚生労働大臣)の合目的な 裁量に委されており、その判断は、当不当の 問題として政府の政治責任が問われることは あっても、直ちに違法の問題を生ずることは ない。ただ、現実の生活条件を無視して著し く低い基準を設定する等憲法および生活保護 法の趣旨・目的に反し、法律によって与えら れた裁量権の限界をこえた場合または裁量権 を濫用した場合には、違法な行為として司法 審査の対象となることをまぬかれない

判例の POINT

生存権の法的性格については、プログラム規 定説、抽象的権利説、具体的権利説の3説が ある。本判決が具体的権利説を採っていない ことには異論がない。しかし、プログラム権 利説、抽象的権利説のいずれを採ったのかに ついては、いずれを採ったのか明らかでない とする見解とプログラム規定説を採ったとす る見解がある。

関連判例

食糧管理法違反事件(最大判昭23.9.29) 憲法25条2項は、社会生活の推移に伴う積極主 義の政治である社会的施設の拡充増強に努力すべ きことを国家の任務の一つとして宣言したもので ある。そして、同条1項は、同様に積極主義の政 治として、すべての国民が健康で文化的な最低限 度の生活を営み得るよう国政を運営すべきことを 国家の責務として宣言したものである。…この規 定により直接に個々の国民は、国家に対して具体 的、現実的にかかる権利を有するものではない。

堀木訴訟(最 大判昭57.7.7)

事例

視力障害者であるAは、障害福祉年金を受給 していたが、子Bを養育していたため、知事 に対し、児童扶養手当受給資格の認定を請求 した。しかし、児童扶養手当法が児童扶養手 当と公的年金の併給を禁止していることか ら、知事は、Aの請求を却下した。そこで、 Aは、児童扶養手当法の併給禁止条項は、憲 法13条、14条1項、25条2項に違反すると して却下処分の取消しを求めた。

判例の 見解

①生存権の実現と立法府の裁量 憲法25条の規定は、国権の作用に対し、 一定の目的を設定しその実現のための積極的 な発動を期待するという性質のものである。 しかも、右規定にいう「健康で文化的な最低 限度の生活」なるものは、きわめて抽象的・ 相対的な概念であって、その具体的内容は、 その時々における文化の発達の程度、経済 的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等 との相関関係において判断決定されるべきも のであるとともに、右規定を現実の立法とし て具体化するに当たっては、国の財政事情を 無視することができず、また、多方面にわた る複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考 察とそれに基づいた政策的判断を必要とする ものである。したがって、憲法25条の規定 の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措 置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁 量にゆだねられており、それが著しく合理性 を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを えないような場合を除き、裁判所が審査判断 するのに適しない事柄である。 ②公的年金相互間の併給調整は、立法府の 裁量事項か。

一般に、社会保障法制上、同一人に同一の 性格を有する2以上の公的年金が支給される こととなるべき、いわゆる複数事故におい て、そのそれぞれの事故それ自体としては支 給原因である稼得能力の喪失又は低下をもた らすものであっても、事故が2以上重なった からといって稼得能力の喪失又は低下の程度 が必ずしも事故の数に比例して増加するとい えないことは明らかである。このような場合 について、社会保障給付の全般的公平を図る ため公的年金相互間における併給調整を行う かどうかは、立法府の裁量の範囲に属する事 柄と見るべきである。また、この種の立法に おける給付額の決定も、立法政策上の裁量事 項であり、それが低額であるからといって当 然に憲法25条違反に結びつくものというこ とはできない。 ③障害福祉年金と児童扶養手当の併給を禁 止することは、憲法14条1項、13条に違反 するか。

障害福祉年金を受けることができる地位に ある者とそのような地位にない者との間に児 童扶養手当の受給に関して差別を生ずること になるとしても、身体障害者、母子に対する 諸施策及び生活保護制度の存在などに照らし て総合的に判断すると、右差別がなんら合理 的理由のない不当なものであるとはいえな い。また、本件併給調整条項が児童の個人と しての尊厳を害し、憲法13条に違反する恣 意的かつ不合理な立法であるといえないこと も明らかである。

判例の POINT

①本判決は、生存権を立法に具体化する際に 立法府の裁量を広く認めているが、その理由 の1つとして、「健康で文化的な最低限度の 生活」は抽象的・相対的な概念であり、その 内容は時々に応じて異なることを挙げてい る。 ②14条1項について、本判決は、障害福祉 年金を受給していない親は児童扶養手当を受 給でき、障害福祉年金を受給している親は児 童扶養手当を受給できないという差別は不合 理なものではないと簡単に結論づけている。 しかし、生存権は尊厳ある人間として生きて いくことに関わる重要な権利であることを考 えると、精神的自由の制限の場合に準じ、 「厳格な合理性の基準」によって合憲性を審 査すべきであるとの批判がある。 ③25条1項と2項の関係について、原審で ある大阪高裁は、「2項は防貧施策(貧困に 陥るのを事前に防止するための施策)を、1 項は救貧施策(防貧施策の実施にもかかわら ず、貧困に陥った者を事後的に救済する施 策)をすべき責務が国にあることを宣言した 規定である」という注目すべき見解(1項2 項分離論)を示したが、本判決は、かかる見 解を採用していない。

関連判例

学生無年金訴訟(最判平19.9.28) 大学在学中に障害を負った元学生が在学中に国 民年金に加入していなかった(その当時、国民年 金法は、20歳以上の大学生について任意加入とし ていた)ことを理由に障害基礎年金の支給を受け られなかったため、年金不支給の処分の取消しと 国家賠償を求めた訴訟。①国が20歳以上の大学生 について強制加入の措置を採らなかったこと、② 障害について初めて診療を受けた日(初診日)に 20歳以上の学生である者は、障害を負う前に年金 に任意加入していないと障害基礎年金を受けるこ とができないのに対し、初診日に20歳未満の者 は、年金に加入していなくても無拠出制の障害基 礎年金を受けることができるとしていることは、 憲法25条、14条1項に違反するかが問題となっ た。 最高裁は、「国民年金制度は、憲法25条の趣旨 を実現するために設けられた社会保障上の制度で あるところ、同条の趣旨にこたえて具体的にどの ような立法措置を講じるかの選択決定は、立法府 の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合 理性を欠き明らかに裁量の逸脱、濫用とみざるを 得ないような場合を除き、裁判所が審査判断する のに適しない事柄である」とした上で、上記①② いずれについても、憲法25条、14条1項に違反し ないとした。

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