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1-2-10 法令科目 民法342条 -398条/1044条 質権

 

第九章 質権

 

担保物権には、前回までにお話しした留置権や先取特権の法定担保物権と、今回からお話する約定担保物権があります。今回のテーマ質権は、約定担保物権の一つで担保として物と手元に置き、返済がないときにその物を売却して優先的に債権回収ができる権利です。①質権の効力、②転質、③質権の種類――と解説していきます。

Ⅰ.質権の効力
質権とはどういう権利かもう少し詳しくお話しすると、債権者が債権の担保として債務者または第三者である物上保証人から提供を受けた物を占有し、その物について他の債権者に先だって自己の債権の弁済を受けることができる約定担保物権です。目的物の占有を債権者に移し、債権者は弁済があるまでこの目的物を留置して、間接的に弁済を強制することができます。もし弁済がない場合には、この目的物を競売し、その売却代金から他の債権者に優先して弁済を受けることもできます。
したがって、質権の効力は、
①目的物を留置する留置的効力
②優先弁済を受ける優先弁済的効力――が主なものです。
また、優先弁済的効力が認められるので当然、物上代位権も認められています。
質権の対抗要件は質権の種類によって異なるので、種類のところで確認してください。
質権は、約定担保物権であることから債権者と質権設定者との質権設定契約によって成立します。そして、この質権設定契約は、質権は目的物の留置に特徴があることから、目的物の占有を質権者に移すことが必要な要物契約です。
では、この質権設定契約の場合に、もし、質権者が目的物を設定者に任意に返還したときは質権は消滅するのでしょうか?
留置的効力が質権の大きな効力なのだから、これを放棄するということは質権自体の放棄に当たり、質権が消滅するというのが通説となっています。

Ⅱ.転質
転質とは、質権者がさらに質入れすることです。
例えば、YさんがXさんに対して、有している貸金債権の担保のために、Xさん所有の絵画を質入れしましたが、Yさんが借金するために、担保としてXさんから預かった絵画をさらにZさんに質入れしてしまうことです。
この転質には、YさんがXさんの承諾を得て行う承諾転質と、Xさんの承諾なく行う責任転質の2種類があります。
以前、転質は法律上認められているものの、設定者の承諾が必要は否か問題とされていましたが、現在は不要とされています。

Ⅲ.質権の種類
質権は目的物によって
①動産質
②不動産質
③権利質――の3種類に分類されます。

1)動産質
動産質とは、動産を目的とする質権のことです。質権設定契約では、目的たる動産を引渡すことが必要になります。動産質権にも即時取得の規定の適用があり、設定者が他人の物であるかのように偽って引渡した場合でも、即時取得によって質権が成立します。
動産質の対抗要件は、占有の継続です。ですから、質権が第三者によって強奪された場合、質権者はその第三者に対しては質権を主張できませんので、質権による返還請求は認められません。このような場合は、占有回収の訴えを起こして問題の解決を図ることになります。占有については第56回を参照してください。

2)不動産質
不動産質とは、不動産を目的とする質権のことを言います。不動産の引渡しを伴う質権設定契約によって成立し、対抗要件は登記です。
不動産質権者は、動産質権と異なり、その目的である不動産を用法に従って使用・収益することが可能です。しかし、その反面、不動産質権者の被担保債権は、動産質のように元本の他にその元本から派生する利息には及びません。
また、不動産質権には存続期間が10年を超えてはならないという制限があります。その理由は、過度に長期に渡り他人の不動産を使用収益することを回避するためです。
不動産質権は、質権者にとっては管理が面倒、設定者にとってはその不動産を利用できないという不便さから、ほとんど利用されていないのが現状です。

3)権利質
権利質とは、財産権を目的とする質権です 譲渡性を持つ財産権は、一般に権利質の目的とすることができ、債権・株式・無体財産権などがしばしば利用されます。
権利質の場合、平成15年改正(平成16年4月1日施行)により、質権の成立に証書の交付が必要なのは手形等の証券的債権の場合のみとされ、要物性が一層緩和されることとなりました。
貸金債権などの指名債権(後で解説します)を権利質の目的とした場合、第三債務者に対する通知か、第三債務者の承諾が対抗要件となります。無記名債権の場合は、動産と見なされるため、動産質と同様、証券の占有が対抗要件です。
質権者は、被担保債権が弁済期を過ぎても債務の履行がない場合、権利者の実行として質物である債権を自らの名で取り立てることができます。

 

 

第一節 総則
(質権の内容)
第三百四十二条  質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
(質権の目的)
第三百四十三条  質権は、譲り渡すことができない物をその目的とすることができない。
(質権の設定)
第三百四十四条  質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
(質権設定者による代理占有の禁止)
第三百四十五条  質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。
(質権の被担保債権の範囲)
第三百四十六条  質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
(質物の留置)
第三百四十七条  質権者は、前条に規定する債権の弁済を受けるまでは、質物を留置することができる。ただし、この権利は、自己に対して優先権を有する債権者に対抗することができない。
(転質)
第三百四十八条  質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。
(契約による質物の処分の禁止)
第三百四十九条  質権設定者は、設定行為又は債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させ、その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない。
(留置権及び先取特権の規定の準用)
第三百五十条  第二百九十六条から第三百条まで及び第三百四条の規定は、質権について準用する。
(物上保証人の求償権)
第三百五十一条  他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。
第二節 動産質
(動産質の対抗要件)
第三百五十二条  動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。
(質物の占有の回復)
第三百五十三条  動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。
(動産質権の実行)
第三百五十四条  動産質権者は、その債権の弁済を受けないときは、正当な理由がある場合に限り、鑑定人の評価に従い質物をもって直ちに弁済に充てることを裁判所に請求することができる。この場合において、動産質権者は、あらかじめ、その請求をする旨を債務者に通知しなければならない。
(動産質権の順位)
第三百五十五条  同一の動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、設定の前後による。
第三節 不動産質
(不動産質権者による使用及び収益)
第三百五十六条  不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができる。
(不動産質権者による管理の費用等の負担)
第三百五十七条  不動産質権者は、管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負う。
(不動産質権者による利息の請求の禁止)
第三百五十八条  不動産質権者は、その債権の利息を請求することができない。
(設定行為に別段の定めがある場合等)
第三百五十九条  前三条の規定は、設定行為に別段の定めがあるとき、又は担保不動産収益執行(民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第百八十条第二号 に規定する担保不動産収益執行をいう。以下同じ。)の開始があったときは、適用しない。
(不動産質権の存続期間)
第三百六十条  不動産質権の存続期間は、十年を超えることができない。設定行為でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、十年とする。
2  不動産質権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から十年を超えることができない。
(抵当権の規定の準用)
第三百六十一条  不動産質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、次章(抵当権)の規定を準用する。
第四節 権利質
(権利質の目的等)
第三百六十二条  質権は、財産権をその目的とすることができる。
2  前項の質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、前三節(総則、動産質及び不動産質)の規定を準用する。
(債権質の設定)
第三百六十三条  債権であってこれを譲り渡すにはその証書を交付することを要するものを質権の目的とするときは、質権の設定は、その証書を交付することによって、その効力を生ずる。
(指名債権を目的とする質権の対抗要件)
第三百六十四条  指名債権を質権の目的としたときは、第四百六十七条の規定に従い、第三債務者に質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。
(指図債権を目的とする質権の対抗要件)
第三百六十五条  指図債権を質権の目的としたときは、その証書に質権の設定の裏書をしなければ、これをもって第三者に対抗することができない。
(質権者による債権の取立て等)
第三百六十六条  質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。
2  債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができる。
3  前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。
4  債権の目的物が金銭でないときは、質権者は、弁済として受けた物について質権を有する。
第三百六十七条    削除
第三百六十八条    削除
第十章 抵当権
第一節 総則

 

約定担保物権の一つ抵当権は、お金を貸す際に、債権者が債務者から不動産の引渡しを受けないで不動産を担保としてお金を貸し、債務者が弁済しないときにはその不動産から優先的に弁済を受ける権利です。今回から2回に分けて、担保の王様でもある抵当権について解説します。
では、まずは、①抵当権の効力、②抵当権の処分――です。

Ⅰ.抵当権の効力
1)抵当権ってどんな権利
抵当権とは、債務者または第三者が占有を移さないで債務の担保に供した不動産について、債権者が他の債権者に先だって自己の債権の弁済を受けることができる約定担保物権です。
占有を設定者の下に留めたまま、目的物の交換価値を把握して優先弁済的効力を有していることが本質的特徴です。
抵当権設定者にとっては目的物の使用・収益を継続できるので、自己の負担する債務の返済に支障を来さないというメリットがあります。また、抵当権者には、目的物には関心がなく、債務の弁済のみが興味の対象ということが多いため、最も重要で利用も多い担保物権となっています。

2)抵当権の成立と消滅
抵当権の成立は約定担保物権であることから当然、債権者と設定者との抵当権設定契約で成立し、登記が対抗要件となります。したがって、登記がなければ第三者に抵当権を設定していることの主張ができません。
抵当権も物権である以上、権利の消滅は、物権の一般的な消滅原因である
①目的物の滅失
②目的物の放棄
③混同――です。
また、担保物権に特有な消滅原因としての④被担保債権の消滅に附従することによっても消滅します。
このほか、抵当権特有の消滅原因として、
⑤代価弁済
⑥抵当権消滅請求の制度――があります。
代価弁済とは、抵当不動産につき所有権を買受けた第三者(取得者)が抵当権者の請求に応じてその代価を抵当権者に弁済した場合、抵当権をその第三者のために消滅させる制度です。
抵当権消滅請求とは、第三取得者自身が代価を評価して抵当権者に対してその代価で抵当権を消滅させることを請求する制度です。
どちらの制度も抵当権の負担付不動産を取得した第三者を抵当権の負担から解放して、その地位を安定させることが目的の制度ですが、代価弁済が抵当権者の主導、抵当権消滅請求が第三取得者の主導である点が異なります。

3)抵当権の及ぶ範囲
抵当権の効力の中で最も重要なものは目的物を換価してその代金から配当を受けられるという優先弁済的効力です。物上弁済的効力があるということは当然、抵当権にも物上代位が認められています。
抵当権により具体的に担保される債権の範囲は、元本は当然担保されますが、利息は満期となった最後の2年分のものに限定されていますから、ここは質権と異なります。
その理由は、抵当権の場合、目的物の占有が設定者の下に残り、設定者がさらに残余価値を抵当にして、後順位の抵当権者が出現することも多いので、それらの者を保護する必要があるからです。
換価できる目的物の範囲は、目的物そのもの自体のほか、目的物に付加して一体をなしている物にも及びます。ただし、明らかに抵当権設定後に付属した従物には抵当権は及びません。
また、果実は使用収益権の成果なので、被担保債権の不履行があるまでは、抵当権の効力が及びません。ちなみに平成15年の改正以前は差押えがあるまででした。被担保債権に不履行が生じると、その後の生じた果実には抵当権が及びます。

4)抵当権の順位
抵当権の場合、後順位の抵当権者が生じることが多いと先ほどお話しましたが、各抵当権者が優先弁済を受ける順位は登記の前後により、順位に応じて、①第1抵当権、②第2抵当権……と呼ばれます。
第1抵当権が弁済等で消滅した場合は、順次、順位が繰り上がる順位上昇の原則がとられています。つまり、第2抵当権が第1抵当権になるということです。

Ⅱ.抵当権の処分
民法では、被担保債権を固定したまま、抵当権を操作する手段として、
①転抵当権
②抵当権の譲渡
③抵当権の放棄
④抵当権の順位の譲渡
⑤抵当権の順位の放棄
⑥抵当権の順位の変更――という6つの方法を規定しています。
①の転抵当とは、抵当権が持っている抵当権を担保にすることです。
②・③の抵当権の譲渡・放棄は、抵当権者が無担保債権者に対して自己の抵当権者としての地位を譲渡したり、主張しなかったりすることです。
④・⑤の抵当権の順位の譲渡・放棄は、抵当権者が後順位抵当権者に対して先順位の地位を譲渡したり主張しなかったりすることです。
⑥の抵当権の順位の変更は、被担保債権とは切り離された順位の絶対的な変更のことです。

 

(抵当権の内容)
第三百六十九条  抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2  地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
(抵当権の効力の及ぶ範囲)
第三百七十条  抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第四百二十四条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。
第三百七十一条    抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
(留置権等の規定の準用)
第三百七十二条  第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。
第二節 抵当権の効力
(抵当権の順位)
第三百七十三条  同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。
(抵当権の順位の変更)
第三百七十四条  抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
2  前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。
(抵当権の被担保債権の範囲)
第三百七十五条  抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。
2  前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。
(抵当権の処分)
第三百七十六条  抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。
2  前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。
(抵当権の処分の対抗要件)
第三百七十七条  前条の場合には、第四百六十七条の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない。
2  主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない。
(代価弁済)
第三百七十八条  抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。
(抵当権消滅請求)
第三百七十九条  抵当不動産の第三取得者は、第三百八十三条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。
第三百八十条    主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。
第三百八十一条    抵当不動産の停止条件付第三取得者は、その停止条件の成否が未定である間は、抵当権消滅請求をすることができない。
(抵当権消滅請求の時期)
第三百八十二条  抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならない。
(抵当権消滅請求の手続)
第三百八十三条  抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない。
一  取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在及び代価その他取得者の負担を記載した書面
二  抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る。)
三  債権者が二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が第一号に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面
(債権者のみなし承諾)
第三百八十四条  次に掲げる場合には、前条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、抵当不動産の第三取得者が同条第三号に掲げる書面に記載したところにより提供した同号の代価又は金額を承諾したものとみなす。
一  その債権者が前条各号に掲げる書面の送付を受けた後二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないとき。
二  その債権者が前号の申立てを取り下げたとき。
三  第一号の申立てを却下する旨の決定が確定したとき。
四  第一号の申立てに基づく競売の手続を取り消す旨の決定(民事執行法第百八十八条 において準用する同法第六十三条第三項 若しくは第六十八条の三第三項 の規定又は同法第百八十三条第一項第五号 の謄本が提出された場合における同条第二項 の規定による決定を除く。)が確定したとき。
(競売の申立ての通知)
第三百八十五条  第三百八十三条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、前条第一号の申立てをするときは、同号の期間内に、債務者及び抵当不動産の譲渡人にその旨を通知しなければならない。
(抵当権消滅請求の効果)
第三百八十六条  登記をしたすべての債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した代価又は金額を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得者がその承諾を得た代価又は金額を払い渡し又は供託したときは、抵当権は、消滅する。
(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力)
第三百八十七条  登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。
2  抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。
(法定地上権)
第三百八十八条  土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
(抵当地の上の建物の競売)
第三百八十九条  抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。
2  前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。
(抵当不動産の第三取得者による買受け)
第三百九十条  抵当不動産の第三取得者は、その競売において買受人となることができる。
(抵当不動産の第三取得者による費用の償還請求)
第三百九十一条  抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、第百九十六条の区別に従い、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができる。
(共同抵当における代価の配当)
第三百九十二条  債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。
2  債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。
(共同抵当における代位の付記登記)
第三百九十三条  前条第二項後段の規定により代位によって抵当権を行使する者は、その抵当権の登記にその代位を付記することができる。
(抵当不動産以外の財産からの弁済)
第三百九十四条  抵当権者は、抵当不動産の代価から弁済を受けない債権の部分についてのみ、他の財産から弁済を受けることができる。
2  前項の規定は、抵当不動産の代価に先立って他の財産の代価を配当すべき場合には、適用しない。この場合において、他の各債権者は、抵当権者に同項の規定による弁済を受けさせるため、抵当権者に配当すべき金額の供託を請求することができる。
(抵当建物使用者の引渡しの猶予)
第三百九十五条  抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
一  競売手続の開始前から使用又は収益をする者
二  強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者
2  前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。
第三節 抵当権の消滅
(抵当権の消滅時効)
第三百九十六条  抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。
(抵当不動産の時効取得による抵当権の消滅)
第三百九十七条  債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。

今回は前回の続き、①根抵当権と②抵当権の実行についてお話します。

Ⅰ.根抵当権はどういう権利か
抵当権が被担保債権を担保するものであるのに対し、一定の範囲に属する不特定の債権を、一定の極度額の限度において担保する抵当権を根抵当権と呼んでいます。
分かりやすく例えると、ある会社を経営している人が、銀行から事業資金を借入れる場合に、返済や新たな借金をするたびに抵当権を消滅させたり、再度設定したりするのでは手間がかかるので、銀行との継続的な取引きで生じる増減する債権を被担保債権として資金を借入れる方法で、これが根抵当権に当たります。
根抵当権の性質は、一定の範囲の不特定の債権の担保ということから、個々の債権と根抵当権との結びつきは抵当権より弱く、附従性や随伴性も緩和されていると言えます。もっとも、根抵当権も抵当権のように換価競売によって優先弁済権を実施するものなので、当然に、遅くても換価の時までには被担保債権を特定する必要があります。
この被担保債権特定の期日は元本確定期日と呼ばれ、平成15年改正(16年4月1日施行)により、根抵当権者はいつでも確定請求ができることになりました。なお、設定者も、3年経過すれば請求ができます。
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1)根抵当権の設定
根抵当権も約定担保物権なので、当然成立のためには契約が必要です。
根抵当権の3つの本質的要素は、
①被担保債権の範囲
②債務者
③極度額――であるため、この3つは契約の内容に必ず入れなければなりません。
確定期日は設定契約の際に決まっている必要はないため、設定契約に必ず入れなければならない要件ではありませんが、実務上は設定契約の段階で同時に定めることが多いです。

2)根抵当権の変更と処分
根抵当権の変更には、
①極度額の変更
②被担保債権の範囲の変更
③債務者の変更
④確定期日の変更――の4つの場合があります。
このうち、被担保債権、債務者、確定期日の変更は元本確定前に限り、利害関係人の承諾なく自由に行えますが、元本確定後は行えません。
これに対して、極度額の変更は元本確定の前後を問わず行えますが、極度額は後順位抵当権者や転根抵当権者などの地位に重大な影響を及ぼすので、利害関係人の承諾が必要です。
根抵当権の処分は、普通抵当権と異なり、
①転根抵当
②全部譲渡
③分割譲渡
④一部譲渡――のみが、元本確定前にのみ認められています。
③の分割譲渡と④の一部譲渡は、分割譲渡が行われると元の根抵当権が分割されて2つの根抵当となる点で同じですが、一部譲渡では、元の根抵当権はそのままで、複数人で1つの根抵当権を共有する形になる点で異なります。

Ⅱ.抵当権の実行
抵当権の実行とは、抵当権が持っている優先弁済権を具体化する手続きのことで、民事執行法で規定されています。
抵当権を実行するためには、まず、抵当権の目的物の所在地を管轄する地方裁判所に抵当権実行の申立てを行います。すると、裁判所ではこれに基づき競売開始決定の送達を行い、差押えの効力が発生します。
この後、競売が開始、買受人が現れて売買許可決定が行われると、買受人は代金を納付して目的物の所有権を取得し、抵当権は消滅します。
そして、競売で得られた代金の配当手続きが行われ、ここで、抵当権者は、他の債権者に先立って配当が受けられることになります。この流れについては下の図でよく確認してください。

1)抵当権実行と土地建物
更地の抵当権者は抵当権設定後、その土地上に建物が建てられた場合には、土地と建物を一括して競売することができます。ただし、優先権は土地部分の対価にのみ働きます。平成15年の改正で、建物を誰が建てたかは問われないことになりました。つまり、債務者以外が建てた建物でも、一括競売の対象となります。
一方、抵当権設定時にすでに土地建物が同一所有者の下に存在し、競売によって所有権が移転した場合には法定地上権が発生します。
次の2例を見てみましょう。
まず、土地・建物を所有するXさんが建物だけに抵当権を設定した場合、抵当権が実行されると、買受人Yさんは建物の所有権を取得しても土地の利用権はなく、建物収去・土地明渡しの請求を受けてしまいます。
逆に、土地のみが抵当に入っている場合は、競売により建物所有者Xさんが土地の買受人Yさんからの建物収去・土地明渡しの請求を受けることになります。
こうした不都合を回避するために、建物所有者に認められた権利が法定地上権(土地の利用権)です。
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2)抵当権と賃借人
抵当権と賃借人との関係にも対抗関係があり、その優劣は対抗要件具備の先後関係で決まってきます。ただし、抵当権登記に劣後する賃貸借登記しかない賃借人でも、自己に優先する抵当権者の同意や同意の登記を備えれば、抵当権者に対抗できます。
もし、対抗できない場合でも、建物が抵当権実行で競売され、買受人が現れても買受から6カ月は明渡しの猶予が認められています。

3)共同抵当の場合の配当
同一債権の担保として、複数の不動産等に抵当権を設定する共同抵当権者が、任意の不動産から優先弁済を受けられるとすると、後順位抵当権者に思いもよらぬ損害を与えてしまうことがあります。
そこで、民法は後順位抵当権者を保護して公平を図るために、各不動産の価格に応じて共同抵当権の被担保債権の負担を分けるなどの規定を設けています。

 

(抵当権の目的である地上権等の放棄)
第三百九十八条  地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。
第四節 根抵当
(根抵当権)
第三百九十八条の二  抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。
2  前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。
3  特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権又は手形上若しくは小切手上の請求権は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。
(根抵当権の被担保債権の範囲)
第三百九十八条の三  根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。
2  債務者との取引によらないで取得する手形上又は小切手上の請求権を根抵当権の担保すべき債権とした場合において、次に掲げる事由があったときは、その前に取得したものについてのみ、その根抵当権を行使することができる。ただし、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては、これを行使することを妨げない。
一  債務者の支払の停止
二  債務者についての破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始の申立て
三  抵当不動産に対する競売の申立て又は滞納処分による差押え
(根抵当権の被担保債権の範囲及び債務者の変更)
第三百九十八条の四  元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする。
2  前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。
3  第一項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。
(根抵当権の極度額の変更)
第三百九十八条の五  根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない。
(根抵当権の元本確定期日の定め)
第三百九十八条の六  根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる。
2  第三百九十八条の四第二項の規定は、前項の場合について準用する。
3  第一項の期日は、これを定め又は変更した日から五年以内でなければならない。
4  第一項の期日の変更についてその変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定する。
(根抵当権の被担保債権の譲渡等)
第三百九十八条の七  元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする。
2  元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができない。
3  元本の確定前に債権者又は債務者の交替による更改があったときは、その当事者は、第五百十八条の規定にかかわらず、根抵当権を更改後の債務に移すことができない。
(根抵当権者又は債務者の相続)
第三百九十八条の八  元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に取得する債権を担保する。
2  元本の確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務を担保する。
3  第三百九十八条の四第二項の規定は、前二項の合意をする場合について準用する。
4  第一項及び第二項の合意について相続の開始後六箇月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなす。
(根抵当権者又は債務者の合併)
第三百九十八条の九  元本の確定前に根抵当権者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債権のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保する。
2  元本の確定前にその債務者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債務のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に負担する債務を担保する。
3  前二項の場合には、根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定を請求することができる。ただし、前項の場合において、その債務者が根抵当権設定者であるときは、この限りでない。
4  前項の規定による請求があったときは、担保すべき元本は、合併の時に確定したものとみなす。
5  第三項の規定による請求は、根抵当権設定者が合併のあったことを知った日から二週間を経過したときは、することができない。合併の日から一箇月を経過したときも、同様とする。
(根抵当権者又は債務者の会社分割)
第三百九十八条の十  元本の確定前に根抵当権者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債権のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に取得する債権を担保する。
2  元本の確定前にその債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債務のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に負担する債務を担保する。
3  前条第三項から第五項までの規定は、前二項の場合について準用する。
(根抵当権の処分)
第三百九十八条の十一   元本の確定前においては、根抵当権者は、第三百七十六条第一項の規定による根抵当権の処分をすることができない。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない。
2  第三百七十七条第二項の規定は、前項ただし書の場合において元本の確定前にした弁済については、適用しない。
(根抵当権の譲渡)
第三百九十八条の十二  元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。
2  根抵当権者は、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する。
3  前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない。
(根抵当権の一部譲渡)
第三百九十八条の十三  元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根抵当権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう。以下この節において同じ。)をすることができる。
(根抵当権の共有)
第三百九十八条の十四  根抵当権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受ける。ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従う。
2  根抵当権の共有者は、他の共有者の同意を得て、第三百九十八条の十二第一項の規定によりその権利を譲り渡すことができる。
(抵当権の順位の譲渡又は放棄と根抵当権の譲渡又は一部譲渡)
第三百九十八条の十五  抵当権の順位の譲渡又は放棄を受けた根抵当権者が、その根抵当権の譲渡又は一部譲渡をしたときは、譲受人は、その順位の譲渡又は放棄の利益を受ける。
(共同根抵当)
第三百九十八条の十六  第三百九十二条及び第三百九十三条の規定は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り、適用する。
(共同根抵当の変更等)
第三百九十八条の十七  前条の登記がされている根抵当権の担保すべき債権の範囲、債務者若しくは極度額の変更又はその譲渡若しくは一部譲渡は、その根抵当権が設定されているすべての不動産について登記をしなければ、その効力を生じない。
2  前条の登記がされている根抵当権の担保すべき元本は、一個の不動産についてのみ確定すべき事由が生じた場合においても、確定する。
(累積根抵当)
第三百九十八条の十八  数個の不動産につき根抵当権を有する者は、第三百九十八条の十六の場合を除き、各不動産の代価について、各極度額に至るまで優先権を行使することができる。
(根抵当権の元本の確定請求)
第三百九十八条の十九  根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定する。
2  根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する。
3  前二項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない。
(根抵当権の元本の確定事由)
第三百九十八条の二十   次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。
一  根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は第三百七十二条において準用する第三百四条の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。
二  根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。
三  根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。
四  債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。
2  前項第三号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第四号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。
(根抵当権の極度額の減額請求)
第三百九十八条の二十一  元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後二年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる。
2  第三百九十八条の十六の登記がされている根抵当権の極度額の減額については、前項の規定による請求は、そのうちの一個の不動産についてすれば足りる。
(根抵当権の消滅請求)
第三百九十八条の二十二  元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるときは、他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者又は抵当不動産について所有権、地上権、永小作権若しくは第三者に対抗することができる賃借権を取得した第三者は、その極度額に相当する金額を払い渡し又は供託して、その根抵当権の消滅請求をすることができる。この場合において、その払渡し又は供託は、弁済の効力を有する。
2  第三百九十八条の十六の登記がされている根抵当権は、一個の不動産について前項の消滅請求があったときは、消滅する。
3  第三百八十条及び第三百八十一条の規定は、第一項の消滅請求について準用する。

 

今回は、民法に規定されていない現実的な担保を解説したあと、少し行政書士試験に向けた実用知識の紹介をします。

民法に規定された担保以外にも現実には多くの担保方法が存在しています。こうした担保手段を非典型担保と言います。
現実には実務上、民法では動産抵当を認めない、民法上の担保は実行手続きが煩雑なのに安価な価値しかないなどの理由から、長年にわたり次々に法の予想しない方法で担保を作り出されてきました。
非典型担保の代表には、
①仮登記担保
②譲渡担保
③所有権留保――がありますが、そのほかにも
④相殺予約
⑤代理受領
⑥ファクタリング――等々種々のものが存在します。
ここでは、3つの代表についてお話ししますが、この3つの担保方法が、民法上の担保と異なる点は、担保権者が担保目的物の所有権を取得、あるいは移転すべき所有権の留保が行われていることです。

Ⅰ.譲渡担保
譲渡担保とは、債権担保のために物の所有権を債権者に譲渡することによって信用授受を得る制度です。債務者が被担保債務を弁済した場合は、目的物の所有権は債務者の元に戻ります。弁済をしなかった場合は、譲渡担保権者が譲渡担保権を実行します。
譲渡担保権の実行の方法は、
①第三者に売却してその代金から優先弁済を受ける処分清算
②譲渡担保権者自ら所有権を取得し、超過額を債務者に返還する帰属清算――があります。
いずれの場合も、債権者が超過額まで取得するのは不当であることから、債権者には清算義務があります。

Ⅱ.仮登記担保
貸金債権を担保する目的で、債務者または第三者所有の不動産について、代物弁済予約や停止条件付代物弁済契約を締結し、所有権移転請求権保全の仮登記を行って、貸金債権の弁済が得られない場合には、その不動産自体を代物弁済として取得できる権利を確保する方法が仮登記担保です。
仮登記担保については「仮登記担保契約に関する法律」が制定され、債権者には清算義務が規定されています。

Ⅲ.所有権留保
所有権留保とは、売主が目的物の引渡しを終えても、売買代金が完済されるまで目的物の所有権を売主の下に留保しておく制度です。
よく見られる例は、乗用車などの割賦払売買契約です。

 

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