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1-2-11 法令科目 民法 399条-465条/1044条 債権

 

第三編 債権

民法の学習も今回からいよいよ債権です。債権とは相手に一定行為を請求できる権利のことですが、学習範囲も広く、内容も複雑で厄介と言えます。一つひとつ確認しながら、以前勉強したことでも疑問を感じたら、その都度戻って確認しながら勉強を進めてください。

債権第1回目は、債権の概念をおよそ掴んでいただけるように①債権とは何か、債権の中でも一番多い②金銭債権について解説します。

Ⅰ.債権は請求権だ
民法は、私人間の関係を権利・義務の関係として考えていくのでしたね。そうすると、その中に現れる権利が、一つは物権、そして物権と並んで重要なのが債権です。
債権とは、他人(債務者)に一定の行為を請求する権利です。
例えば、物を買ったときに代金を支払え――という権利、お金を貸したときにお金を返せ――という権利です。

1)債権の目的
物権は物を直接的に支配する権利で、目的物は「物」であったのに対して、債権は債務者に一定の行為を請求する権利ですから、債権の目的は債務者の一定の行為(給付)ということになります。
物権には1つの物権と相反する物権は成立し得ないという排他性がありましたが、債権には、債務者という人格が介在する以上、債権の目的を支配することは考えられず、排他性はないと言えます。つまり、相反する債権も成立し得ると言うことです。
例えば、行政書士受験対策講座を開講しているA校に、ある有名な講師Xが●月●日に特別講座を開くという契約を結ぶと、A校は●月●日に講座を開講せよという債権を持つことになります。しかし、Xさんが日を間違えて記憶し、B校に対しても同じ●月●日に特別講座を開くという契約を結ぶことは可能です。B校もA校と同じ●月●日に講座を開講せよという債権を持つことになります。もちろん、Xさんはどちらか一方の義務しか果たせません。しかし、A校の債権があるから、B校の債権は成立しないということにはなりません。このことが債権には排他性がないということです。
なお、実際に、この場合に解決を図るには、Xさんは、義務を果たさなかった学校に対して損害賠償をして、公平を保つことになります。

2)債権の分類
債権は、何度も言っているように債務者の給付を目的としているので、その給付の種類によって分類することができます。
まず、給付内容を
①債務者の物の引渡しとする与える債務
②それ以外のなす債務――に分類することができます。
与える債務は、その与える物が特定か不特定化によって、さらに
①特定物債権
②不特定物債権――に分類でき、債務不履行(後の回で解説)の際にこの分類が重要になってきます。
なす債権は、債務者の物の引渡し以外の行為を内容としますが、例えば、土地に工作物を造らないのような消極的な内容のものも存在します。
このなす債務は、代わりの人が債務を行えるかどうかで、
①代替債務
②被代替債務――に分類でき、強制履行(後の回で解説)の際にこの分類が重要となってきます。
また、債務の分類として、A債務あるいはB債務のどちらかを選択して履行するという選択債務の形態も存在します。

Ⅱ.金銭債権
与える債務の典型に金銭債務があります。金銭債務を反対から見た金銭債権は、一定の金銭の引渡しを目的とする債権です。
金銭は、代替物の極限ともいうべきもので、後の回でお話しする債務不履行の場合の損害賠償では特則が定められているほどです。
その内容を少しのぞいてみると、金銭債務の損害賠償は実害とは無関係、債務者の故意・過失を要件としない――などです。

1)利息と法定利率
金銭の賃借に当たっては、元金の返還とともに利息の支払いを求められることが少なくありません。利息は、元金を借りた期間に対応した一定の比率(利率)で計算されます。この利息は、契約の際の特約または法律の規定がなければ発生しませんが、利息が発生する場合は、契約に利息に関する取り決めがない場合は、民事は年5分(%)、商事は年6分の利率と決まっています。
利率は、本来、当事者の合意によって自由に定められますが、貸主と借主の経済的な関係から不当に高利な利率が設定されることを防ぐため、利息制限法により、金銭消費貸借には、利息、遅延損害金(後述)の制限が行われます。

2)利息制限法による制限利率
利息制限法による上限金利は、元本により異なります。
①元本が10万円未満→利率年20%まで
②元本が10万円以上100万円未満→利率年18%まで
③元本が100万円以上→利率年15%まで
なお、出資法は、賃金業者についての上限利率を年20%とし、これを超える利率については刑事罰の対象としています。
また、利息が支払期日までにかかるのに対し、支払期限が過ぎてから支払い済みまでにかかるのが遅延損害金です。利息制限法では、遅延損害金に対しても上限を定め、賠償額の予定は制限利率の上限の1.46倍とされています。

前回までにも債務不履行という言葉がたびたび出てきましたが、債権を知るうえで、債務不履行は常に付きまとい、問題発生の原因となります。そこで、今回は、①債務不履行制度、②債務不履行と損害賠償について、まとめてみることにします。

Ⅰ.債務不履行制度
債務不履行とは、債務者が債務の本旨に従った履行を行わないことです。つまり、義務を負うべき人が約束を守らないことが債務不履行です。
では、次の例を見てみましょう。
XさんはYさんから建物を買いましたが、Yさんが約束の日に建物を引渡してくれなかったため、Xさんは、しばらくのあいだ賃貸マンションを借りました。この場合、Xさんは、その間の家賃をYさんに請求できるでしょうか?
前回の解説のとおり、債務者が自発的に債務の履行をしない場合には、債権者は強制履行の方法によって、債権内容の実現を図ることができます。でも、性質上強制履行できない債権や、債権内容によっては、上記の例のように債権内容の実現が遅れたことで債権者に損害が生じることも考えられます。
こうした場合、債権者が債務者の債務不履行によって生じた損害の補てんを受けることができなければ、その契約はとても不公平なものと言えます。
そこで、民法は、債権者が債務の不履行によって被った損害の賠償を求める制度を設けています。つまり、債務者の責に帰すべき事由による債務不履行があり、それによって債権者が損害を被ったときは、債権者は被った損害を金銭賠償という形で債務者に対して請求できます。
覚えていますか? 債務不履行には、①履行遅滞、②履行不能、③不完全履行――の3つの形態がありましたね。

①の履行遅滞とは、履行が可能であるのに履行期を過ぎてしまったような場合、②の履行不能とは、履行が不可能になってしまった場合、③の不完全履行とは履行は行われたものの、それが不完全な場合です。上記の事例は、①の履行遅滞に当たります。
債務不履行に基づく損害賠償請求をするためには、債務不履行が債務者の責に帰すべき事由によることが必要です。
責に帰すべき事由とは、債務者の故意や過失、または信義則上故意や過失と同様に見える場合です。
また、信義則上故意・過失と同様に見える場合とは、例えば、債務者自身に故意・過失がなくても、債務者が雇っている従業員に故意・過失があった場合などです。これを法律的に言うと、履行補助者の故意・過失と言います。
ただし、債務者の責に帰すべき債務不履行があって、それによって債権者が損害を被っても、債務者の債務不履行が違法でなければ損害賠償請求権は発生しません。
この例は、前述の例の場合に、Xさんには売買代金支払義務があるので、Xさんがこの義務を果たしていなければ、Yさんが建物の引渡しを拒んでも(同時履行の抗弁権)、Yさんの債務不履行は違法とならず、Xさんに損害賠償請求権は発生しません。

Ⅱ.損害賠償請求は因果関係がポイント
債務不履行の効果として最も重要なものは損害賠償請求権の発生です。この損害賠償請求権が発生するためには次の3つの要件が必要です。
①債務不履行があること
②債権者に損害が生じたこと
③その損害は債務不履行と相当因果関係があること
②において、債権者が損害賠償請求をするのに必要な損害には、財産的損害に限らず日財産的損害=精神的損害も認められています。この精神的損害賠償を慰謝料と呼んでいます。よく、耳にする言葉ですね。
財産的損害は、既存の利益の減少である積極的損害だけでなく、債務不履行がなければ得られたであろう利益(逸失利益)という消極的損害も含まれます。
③において、債務不履行と相当因果関係がある損害とは、債務不履行から通常生じる損害(通常損害)と特別の事情によって生じた損害(特別損害)のうち、当事者が予見可能であった損害がこの相当因果関係の範囲に含まれるものとされています。

★損害賠償額の算定
債務不履行によって損害が生じた場合、いつの時点の価格で賠償額を算定すべきかについては、判例は原則として債務不履行時を基準として、その後の価格の高騰で損害額が拡大したような場合、その価格の高騰は特別事情だとして、予見可能であれば高騰した価格での賠償を認めています。
また、履行遅延による損害賠償請求の場合、債権者は依然として本来の債権の履行も請求するわけですから、損害賠償は原則として、履行が遅れたことによる損害賠償(遅延賠償)のみとなります。
履行不能の場合は、追完可能な場合であれば遅延賠償、追完不能であれば填補賠償となります。
債務不履行は債権者に損害を与えるばかりとは限りません。損害と同時に利益を与える場合もあります。そのような場合は、損害からその利益を控除したものが損害賠償額となります。例えば、債権者が保険に加入していて、保険金の支払いを受けたような場合です。これを、損益相殺と言います。
債務不履行には債権者にも過失がある場合も考えられます。このような場合、損害賠償の全額を債務者に負担させることは公平とは言えません。そこで、賠償の責任および範囲の適用を制限する過失相殺の制度もあります。
ところで、商取引などの契約で、条項に賠償額の予定を入れたものをよく目にします。賠償額の予定とは、当事者があらかじめ債務不履行の発生を予想して、賠償する額の合意をして契約する場合のことです。

民法では、一定の場合に債権者が債務者の財産に介入する権利を認めています。その一つが債権者代位権、もう一つが詐害行為取消権です。
今回はこの二つの債権者の権利と、多数の債権者や債務者がいる多数当事者の債権と債務について解説します。
債務者が債務を自発的に履行してくれない場合、債権者は民事手続きによって債務者の財産を強制的に換価し、債務を果たしてもらえるかを判断します。つまり、究極的には債務者の財産が債権者の債権の引当となるわけです。ということは、債権者にとっては、債務者の財産(責任財産)が確保されていることが重大な関心事と言えます。
債権者と債務者の財産との関係から、民法では、一定の場合に債権者に対して、債務者の財産管理に介入することを認めています。これを責任財産保全制度といい、
①債務者が財産減少を放置している場合に介入する債権者代位権、
②債務者が積極的に財産減少を企図している場合に介入する詐害行為取消権――が認められています。

Ⅰ.債権者代位権
次の例を見てみましょう。
XさんはYさんに対して2000万円の貸金債権を有していますが、YさんはZさんに対する2000万円の債権のほか、めぼしい財産は持っていません。YさんのZさんに対する債権が時効消滅してしまいそうな場合、XさんはYさんに代わってZさんに対する債権を行使し、時効を中断することで、Yさんの財産減少を防ぐことができます。
この場合のXさんの権利が債権者代位権です。この債権者代位権は債権者が他人である債務者の財産管理に介入するものなので、責任財産維持としての厳格な要件が必要です。
①被保全債権が弁済期にある金銭債権あること
②無資力の債務者が未だ権利行使をしていないこと
③その権利が一身専属でないこと――などがその要件です。
債権者代位権は本来、責任財産保全のための制度なので、被保全債権は金銭債権であることが必要です。しかし、判例は、必要かつ有効である場合、金銭債権以外の特定債権保全のために債権者代位権の転用を認めています。
例えば、不動産がXさん→Yさん→Zさんと移転しましたが、登記上は未だXさんとなっているとき、Zさんは一定の場合に、Yさんの持つ移転登記請求をYさんに代わってXさんに対して行えます。

Ⅱ.詐害行為取消権
次の例を見てみましょう。
XさんがYさんに対する2000万円の債権を有しているとき、Yさんが唯一の財産である2000万円相当の土地をZさんに贈与してしまったような場合、Xさんはその贈与を取消してYさんの下にその土地を戻させることができます。
この場合のXさんの権利が詐害行為取消権です。
これも債権者代位権と同様、責任財産保全のための制度なので、
①被保全債権が金銭債権であること
②債務者が無資力であること
③債務者に債権者を詐害する意思のあること
④債務者の相手方も債権者を害することを知っていたこと(悪意)――などの厳格な要件が必要です。

Ⅲ.多数当事者の債権・債務
多数当事者の債権・債務とは、1個の同一の給付を目的とする債権または債務が多数の者に帰属しているような関係のことです。
民法上認められているものとして4つ、解釈上認められるものに1つ、次の合計5つの種類があります。
①分割債権・債務関係
②不可分債権・債務関係
③連帯債務
④保証債務
⑤不真正連帯債務

1)分割債権・債務
債権者に対し、300万円の債務を負っている者に相続が開始し、相続人が債務者の3人の子である場合、債権者は各相続人に対して100万円ずつしか請求できません。300万円の債権が独立の100万円の債権に分割されてしまったからです。このとき、相続人の1人が無資力の場合、債権者は他の2人から200万円の弁済を受けられるだけになり、債権者にとっては予想外の損害が生じてしまいます。

2)不可分債権・債務
上記の例の場合に、債権者と3人の相続人の話し合いで、300万円の債務を不可分債務としたら、債権者はどの者に対しても全額の300万円を請求することができます。すると、仮に相続人の1人が無資力であっても他の者から300万円の弁済を受けることができるので、債権者にとっては分割債務よりも有利です。
合意による不可分債権の例をお話ししましたが、共同賃借人の賃料債務のように債権の目的が性質上、当然に不可分債権とされるものもあります。

3)連帯債務
連帯債務は、数人の債務者が同一内容の給付について、各々独立に全部の給付義務を負い、そのうちの1人の給付があれば、他の債務者の債務もすべて消滅する債務のことです。

4)保証債務
保証債務は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その債務を履行する債務で、保証人と債務者の間の保証契約によって成立します。

5)不真正連帯債務
不真正連帯債務とは、連帯債務のうちでも各債務者間に緊密な関係がないため、一債務者について生じた事由が他の債務者に影響を及ぼさず、また、負担部分も存在しないため、求償関係も当然には生じないとされる債務です。
不真正連帯債務において絶対効が生じるのは、弁済、相殺等の債権者が満足する事由だけで、その他は他の債権者・債務者に影響を及ぼさない相対効しか認めないことで、債権者の保護を図っています。
共同不法行為の被害者に対する損害賠償請求権がこの代表例です。

 

今回は、前回お話しした保証債務について、もう少し詳しく解説します。
保証債務とは債権の回収を確実にする保障制度で、債務者が債務の履行をできない場合に、保証人が代わって債務を履行することでしたね。
今回は、①保証債務と保証人の責任、②保証の類型――をお話しします。

Ⅰ.保証債務と保証人の責任
保証債務とは、ある債務の履行がない場合に、他の人がその債務と同一内容の給付を目的とする債務を負うことです。
例えば、YさんがXさんからの借金を返済できないときに、Yさんに代わってZさんが返済するというように合意しておくことで、このときYさんのXさんに対しての返済債務を主たる債務、Yさんを主たる債務者、ZさんのXさんに対して負担する債務を保証債務、Zさんを保証人と呼びます。
物権のところでお話しした約定担保物権は、担保のために他人である保証人の資力を引当てとすることから、担保物権を物的担保と呼ぶのに対して、保証債務は人的担保と呼ばれます。

1)保証債務の性質
保証債務は主たる債務と同一内容の給付を目的とはするものの、あくまで主たる債務とは別の独立した債務です。ただし、保証債務は主たる債務の担保であることから、主たる債務に附従し、随伴する担保物権同様の性質を有します。
また、保証債務の附随的性質から、主たる債務に生じた事由は、原則として保証人にも効力を及ぼします。一方、保証債務に生じた事由は、弁済など主たる債務を満足させるもの以外は、主たる債務に影響を及ぼしません。弁済した場合には、保証人には主たる債務者に対する求償権が認められます。
保証債務はあくまで、主たる債務が履行されない場合に補充的に履行されるものなので、債権者がいきなり保証人に請求してきたり、強制執行してきたような場合には、保証人に、
①催告の抗弁権
②検索の抗弁権――が認められています。
催告の抗弁権とは「まず最初に債務者に催告せよ」と言えること、検索の抗弁権とは「主たる債務者への強制執行を検討せよ」と主張できることです。

2)保証債務の成立
保証債務は当然ですが保証契約で成立します。この保証契約の当事者は債権者と保証人です。実務上は、保証人が保証契約を行う場合は主たる債務者からの依頼が多いと思いますが、主たる債務者は当事者ではないことに注意が必要です。なお、保証契約は書面または電磁的記録で行わなければ効力が生じません。

Ⅱ.保証の類型
保証の類型には、
①通常保証
②連帯保証
③共同保証
④継続的保証――などがあります。
今日の社会の複雑化により、保証の形態もさまざまな特殊なものが出てきています。特殊な形態の保証債務のうち、重要な連帯保証、共同保証、継続的保証についてお話しします。

1)連帯保証
保証人が主たる債務者と連帯して保証債務を負担することを連帯保証と呼びます。この連帯債務には補充性がないので、催告・検索の抗弁権が存在しません。つまり、債権者にとっては、通常の保証債務よりも有利な内容なので、現実の取引では単なる保証よりも、連帯保証の特約が結ばれている場合がほとんどです。

2)共同保証
同一の主たる債務について数人の保証人がある場合を共同保証と言います。共同保証の複数の保証人には、債権者に対して平等の割合で分割された額についてのみ保障債務を負担すればよいという分別の利益が認められています。
例えば、主債務が1000万円で2名の共同保証人がいる場合は、各共同保証人は500万円の保証債務だけ保証すればいいことになります。
ただし、保証人相互間で全額弁済の特約を付けた保証連帯の形をとった場合は、各共同保証人に分別の利益はなく、債権者に対し1000万円の保証債務を負担することになります。
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3)継続的保証
継続的保証=根保証とは、一定期間の間に生じる不特定の債務を保障するもので、次の3つのタイプがあります。
①継続的取引から生じる債務の保証を目的とする信用保証
②賃貸借契約上の賃借人の債務の保証
③身元保証
こうしたタイプの保証は、保証されるべき被保証債務が契約時点で明確でないため、保証人の責任が過酷なものとなる危険性があるのが特徴です。そのため、一定期間経過後の保証人の解約権が判例や立法で認められています。

4)平成16年の保証契約に関する改正
過大になりがちな保証人の責任の適正化を図るため、平成16年に、次の保証部分について民法が改正されました。
(1)保証契約の書面作成
すべての保証契約について、契約書等の書面(あるいは電磁的記録)の作成が必要となり、ないものは無効になります。
(2)貸金等根保証契約
中小企業が融資を受ける際、代表者が会社債務の包括的な個人保証をとられるケースが多く、その責任が極めて過酷であることが少なくないので、融資に関する個人の根保証契約に限って、保証人の責任限定として3つの改正が行われました。
①金額の面から、保証限度額(極度額)の定めを要求し、これのないものを無効とする
②期間の面から、5年以内の元本確定期日の定めを要求し、これを超える期間を定めても期日のない定めとして契約の日から3年後が元本確定期日となる
③主債務者が強制執行を受ける等があった場合には、その後の融資については保証債務の負担が及ばない

 

私たちが売買契約で物を買ったり売ったりできるように、債権や債務も売買などの法律行為で移転させることができます。債権をその同一性を保ちながら、契約によって移転させることを債権譲渡と言いますが、今回は①債権譲渡と、逆に債務を移転する②債券引受についてお話しします。

Ⅰ.債権は契約により移転することができる
債権譲渡は、債権を、同一性を保ちながら契約により移転することです。同一性を保つとは、譲渡の前後でその債権が別の新たな債権とはならない、ということです。また、相続や会社の合併などで生じる債権の移転は、民法でいう債権譲渡には当たりません。あくまで、契約による移転が必要です。
債権譲渡は、今日の取引社会では、有価証券制度と並んで極めて重要な作用を果たしています。

1)譲渡性の制限
債権譲渡にも、次の3つの場合に制限がかかります。
①債権の性質
②法律
③譲渡禁止特約
①の債権の性質とは、債権者が変わることによって給付の内容が変質してしまう場合です。例えば、ある有名な画家に「肖像画を描いてもらう」という債権の場合、その画家以外が描いたのでは、債務を果たしたとは言えないからです。
②の法律とは、法律が生活保障の見地から、本来の債権者に対してのみ給付させようとしている債権については、譲渡が禁止されています。例えば、扶養を受ける権利がこれに該当します。
③の譲渡禁止特約とは、譲渡契約の際に当事者が反対の意思を表示した場合には債権譲渡ができないという特約を付けることです。ただし、譲渡禁止特約は善意の第三者には対抗できません。
また、譲渡禁止特約のある指名債権を譲受人が特約の存在を知って譲受けた場合、債務者がその譲渡について承諾しているときは、債権譲渡の時に遡って有効となります。その理由は、譲渡禁止特約は債務者の利益のためにある特約なので、債務者が承諾していれば、問題が発生しないはずだからです。
その場合でも、第三者の権利を害することはできず、債務者の承諾が第三者が現れる後だった場合は、債権譲渡は無効となります。

2)指名債権譲渡の対抗要件
債権譲渡は、ある権利における権利者の変動を生じる点では、物権変動と同じです。債権の譲渡自体は、当事者の合意のみによって成立しますが、当事者以外の第三者に対抗する場合は、対抗要件が必要です。
債権者が特定されていて債権の成立・譲渡のために証書の作成・交付を要しない債権を指名債権と言いますが、指名債権の対抗要件は、第三者が債務者である場合は、譲渡人の債務者に対する通知あるいは債務者の承諾です。この場合に、債務者を要件の基本に置いた理由は、債務者が債務を誰に対して負うべきかを分かっていなければならないからです。
債務者以外の第三者に対抗する場合には、通知や承諾が確定日付のある証書によって成されていなければなりません。それは、通知や承諾は、それだけでは優劣関係がはっきりしないまま、複数存在することが予想されるため、証拠力ある方法による対抗要件が必要だからです。
なお、一定の場合、特例法により対抗要件具備の簡素化が認められています。
例えば、小口の多数債権の一括処分の便宜として「特定債権法」、法人の債権譲渡について「債権譲渡特例法」は、①日刊新聞への広告、②法務局のコンピューターへの譲渡データの登記――を行うことで、確定日付のある通知とみなすなどの規定を設けています。

Ⅱ.債務引受
債務引受とは、債務の同一性を保ちながら、契約により債務を引受人に移転することです。
債務引受には、
①免責的債務引受
②重畳的債務引受――の2種類があります。
免責的債務引受は、移転により旧債務者は債務を免れます。一方、重畳的債務引受は、従来の債務もそのまま存続しながら、旧債務者と並んで新債務者も同一内容の債務を負担します。

 

第一章 総則
第一節 債権の目的
(債権の目的)
第三百九十九条  債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。
(特定物の引渡しの場合の注意義務)
第四百条  債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
(種類債権)
第四百一条  債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。
2  前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。
(金銭債権)
第四百二条  債権の目的物が金銭であるときは、債務者は、その選択に従い、各種の通貨で弁済をすることができる。ただし、特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは、この限りでない。
2  債権の目的物である特定の種類の通貨が弁済期に強制通用の効力を失っているときは、債務者は、他の通貨で弁済をしなければならない。
3  前二項の規定は、外国の通貨の給付を債権の目的とした場合について準用する。
第四百三条    外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる。
(法定利率)
第四百四条  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。
(利息の元本への組入れ)
第四百五条  利息の支払が一年分以上延滞した場合において、債権者が催告をしても、債務者がその利息を支払わないときは、債権者は、これを元本に組み入れることができる。
(選択債権における選択権の帰属)
第四百六条  債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に属する。
(選択権の行使)
第四百七条  前条の選択権は、相手方に対する意思表示によって行使する。
2  前項の意思表示は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない。
(選択権の移転)
第四百八条  債権が弁済期にある場合において、相手方から相当の期間を定めて催告をしても、選択権を有する当事者がその期間内に選択をしないときは、その選択権は、相手方に移転する。
(第三者の選択権)
第四百九条  第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者又は債務者に対する意思表示によってする。
2  前項に規定する場合において、第三者が選択をすることができず、又は選択をする意思を有しないときは、選択権は、債務者に移転する。
(不能による選択債権の特定)
第四百十条  債権の目的である給付の中に、初めから不能であるもの又は後に至って不能となったものがあるときは、債権は、その残存するものについて存在する。
2  選択権を有しない当事者の過失によって給付が不能となったときは、前項の規定は、適用しない。
(選択の効力)
第四百十一条  選択は、債権の発生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
第二節 債権の効力
第一款 債務不履行の責任等
(履行期と履行遅滞)
第四百十二条  債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
2  債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
3  債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
(受領遅滞)
第四百十三条  債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないときは、その債権者は、履行の提供があった時から遅滞の責任を負う。
(履行の強制)
第四百十四条  債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2  債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる。ただし、法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる。
3  不作為を目的とする債務については、債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のため適当な処分をすることを裁判所に請求することができる。
4  前三項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。
(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
(損害賠償の範囲)
第四百十六条  債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2  特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
(損害賠償の方法)
第四百十七条  損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。
(過失相殺)
第四百十八条  債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。
(金銭債務の特則)
第四百十九条  金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2  前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3  第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
(賠償額の予定)
第四百二十条  当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
2  賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3  違約金は、賠償額の予定と推定する。
第四百二十一条    前条の規定は、当事者が金銭でないものを損害の賠償に充てるべき旨を予定した場合について準用する。
(損害賠償による代位)
第四百二十二条  債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。
第二款 債権者代位権及び詐害行為取消権
(債権者代位権)
第四百二十三条  債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
2  債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
(詐害行為取消権)
第四百二十四条  債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2  前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。
(詐害行為の取消しの効果)
第四百二十五条  前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。
(詐害行為取消権の期間の制限)
第四百二十六条  第四百二十四条の規定による取消権は、債権者が取消しの原因を知った時から二年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
第三節 多数当事者の債権及び債務
第一款 総則
(分割債権及び分割債務)
第四百二十七条  数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
第二款 不可分債権及び不可分債務
(不可分債権)
第四百二十八条  債権の目的がその性質上又は当事者の意思表示によって不可分である場合において、数人の債権者があるときは、各債権者はすべての債権者のために履行を請求し、債務者はすべての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。
(不可分債権者の一人について生じた事由等の効力)
第四百二十九条  不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。この場合においては、その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与される利益を債務者に償還しなければならない。
2  前項に規定する場合のほか、不可分債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は、他の不可分債権者に対してその効力を生じない。
(不可分債務)
第四百三十条  前条の規定及び次款(連帯債務)の規定(第四百三十四条から第四百四十条までの規定を除く。)は、数人が不可分債務を負担する場合について準用する。
(可分債権又は可分債務への変更)
第四百三十一条  不可分債権が可分債権となったときは、各債権者は自己が権利を有する部分についてのみ履行を請求することができ、不可分債務が可分債務となったときは、各債務者はその負担部分についてのみ履行の責任を負う。
第三款 連帯債務
(履行の請求)
第四百三十二条  数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
(連帯債務者の一人についての法律行為の無効等)
第四百三十三条  連帯債務者の一人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。
(連帯債務者の一人に対する履行の請求)
第四百三十四条  連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。
(連帯債務者の一人との間の更改)
第四百三十五条  連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。
(連帯債務者の一人による相殺等)
第四百三十六条  連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。
2  前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる。
(連帯債務者の一人に対する免除)
第四百三十七条  連帯債務者の一人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる。
(連帯債務者の一人との間の混同)
第四百三十八条  連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。
(連帯債務者の一人についての時効の完成)
第四百三十九条  連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については、他の連帯債務者も、その義務を免れる。
(相対的効力の原則)
第四百四十条  第四百三十四条から前条までに規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。
(連帯債務者についての破産手続の開始)
第四百四十一条  連帯債務者の全員又はそのうちの数人が破産手続開始の決定を受けたときは、債権者は、その債権の全額について各破産財団の配当に加入することができる。
(連帯債務者間の求償権)
第四百四十二条  連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。
2  前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。
(通知を怠った連帯債務者の求償の制限)
第四百四十三条  連帯債務者の一人が債権者から履行の請求を受けたことを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、過失のある連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
2  連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済をし、その他有償の行為をもって免責を得たときは、その免責を得た連帯債務者は、自己の弁済その他免責のためにした行為を有効であったものとみなすことができる。
(償還をする資力のない者の負担部分の分担)
第四百四十四条  連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する。ただし、求償者に過失があるときは、他の連帯債務者に対して分担を請求することができない。
(連帯の免除と弁済をする資力のない者の負担部分の分担)
第四百四十五条  連帯債務者の一人が連帯の免除を得た場合において、他の連帯債務者の中に弁済をする資力のない者があるときは、債権者は、その資力のない者が弁済をすることができない部分のうち連帯の免除を得た者が負担すべき部分を負担する。
第四款 保証債務

 

今回は債権の権利としての①法律上の保障と、②債権回収とその手段について解説します。今回も債権全体をつかんでいただくためのお話です。

Ⅰ.債権は法律により強い保障がなされている
債権は権利として法律上どのような保障がなされているのでしょうか?
まず第一に、債権とは債権者が債務者に対して一定の行為を請求できる権利である以上、債権者は裁判に頼らなくても当然に債務者に対して債務履行の請求を行え、債務者がその債務を任意に履行すれば、その給付内容が正当なものとして法律上保障されます。
では、債務者が任意に債務の履行を行わないときはどうなるのでしょう?
そのような場合、債権者は強制的に債権の内容を実現するように国家機関に働きかけることができます。法律では、自力救済を禁じて国家機関を通した債権内容の強制的実現を保障しています。この国家機関を通した債権内容の強制的実現を、任意の履行と比較する意味で民事執行法上の強制履行と呼んでいます。
そして、強制履行には次の3つがあります。
①直接強制
②代替強制
③間接強制

以上はいずれも、債権の債務者の給付を求める権利としての性質上、当然に導かれるものと言えますが、これ以外の債権に対して法が与えている効力に妨害排除請求があります。権利の不可侵性から物権と同様に債権にも妨害を排除する効力が認められているわけですが、侵害はある程度継続してなされている必要があり、実際には物の利用を目的とする賃借権などを巡る問題の場合に妨害請求権が登場します。
また、第三者が債権を侵害した場合にはそれを不法行為として損害賠償請求することが可能です。以前は、債権は対債務者に対する権利にすぎないとして第三者への損害賠償を否定する見方もありましたが、現代では、
①債権も法的な保護を受ける必要があること
②債権の相対性は直接的な効力を問題する場合の性質にすぎないこと――などから、債権侵害の不法行為性が認められています。
このほか、民法上認められている債権の効力の一つに受領遅滞があります。受領遅滞とは、債務の履行に当たって、受領その他債権者の協力を必要とする場合に債務者が債務の本旨に沿った提供をしていたにもかかわらず、債権者が債務の履行を受領することを拒んだり、債務の履行を受領することができないため、履行が遅延している状態になることです。この場合は、債務者が不利益を免れるために消極的な保護が受けられますが、法律で、債務者に解除権や損害賠償請求権を認められているわけではありません。

Ⅱ.債権回収とその手段
債権はそもそも債務者の給付を目的とする権利なので、債務者が任意の給付を行わない場合、債権者は、債権を回収するという問題に直面することになります。債権回収には次のような手段があります。
①交渉による回収

②内容証明郵便の発送

③法的手続による回収Ⅰ(簡易裁判所による調停・支払督促・少額訴訟手続)

④法定手続による回収Ⅱ(強制執行)

1)交渉による回収
まず、債務者に対する履行の督促を行います。債務者が給付しない場合としては、単に忘れているだけという場合もありますので、いきなり裁判沙汰にするのは穏当ではありません。履行回収は債権者自ら行わなくても、他人に依頼することも可能です。平成10年に成立した「サービサー法」では、従来弁護士にしか許されていなかった債権回収が、民間業者でも行えるようになり、手軽に適正な債権回収が図れるような措置が講じられています。

2)内容証明郵便
直接、債務者に履行の督促を行っても依然債務を果たしてくれない場合には、次の手段は債務者に内容証明郵便を送ることです。
内容証明郵便とは、郵送した文書の内容と発信した日付を郵便局が証明してくれる郵便です。通常は、配達証明も付けて発送し、文書が確かに相手方に送達されたことも証明しておきます。
内容証明郵便は、訴訟提起の準備として利用されることが多いため、債務者に訴訟提起を意識させることで、債務の履行を間接的に促すことにつながります。発信者を弁護士名義などにすれば、なおさら効果が期待できます。

3)法的手続による回収Ⅰ
上記の手段で解決しない場合は、債権者は法的手続を取ることになり、民法ではいくつかの方法を用意しています。
簡易裁判所で行う手続には、
①調停
②支払督促
③少額訴訟手続――があります。
調停とは、裁判官1名と調停委員2名で構成される調停委員会が中間に入って、当事者双方の譲歩を引出して解決を図る手続きです。調停が調い、調停調書が作成されると訴訟の確定判決と同様の効果を生じます。
次に支払督促とは、申立人の申立てにより、書類審査だけで発布される命令です。相手方の異議がなければ仮執行宣言を得て強制執行することも可能です。
また、少額訴訟手続とは、60万円以下の金銭の支払いを求める訴えを、原則1回の期日で審理を済ませて直ちに判決を言い渡す手続きです。

4)法的手続きによる回収Ⅱ
簡易裁判所での法的手続きでも解決に至らない場合は、訴訟を起こすことになります。訴訟は判決という形で公権的な判断が下される最も厳格な手続きです。この判決により強制執行も可能となります。
ただし、訴訟による場合は、勝訴判決まで相当程度の期間を要するため、債務者が資産を処分してしまうこともあり得ます。このような事態への対策として、一定の保証金を納めて簡易・迅速な命令を得る仮差押えなどの保全処分も用意されています。

 

 

第一目 総則
(保証人の責任等)
第四百四十六条  保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2  保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3  保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
(保証債務の範囲)
第四百四十七条  保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
2  保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。
(保証人の負担が主たる債務より重い場合)
第四百四十八条  保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。
(取り消すことができる債務の保証)
第四百四十九条  行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合又はその債務の取消しの場合においてこれと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定する。
(保証人の要件)
第四百五十条  債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。
一  行為能力者であること。
二  弁済をする資力を有すること。
2  保証人が前項第二号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。
3  前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない。
(他の担保の供与)
第四百五十一条  債務者は、前条第一項各号に掲げる要件を具備する保証人を立てることができないときは、他の担保を供してこれに代えることができる。
(催告の抗弁)
第四百五十二条  債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。
(検索の抗弁)
第四百五十三条  債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。
(連帯保証の場合の特則)
第四百五十四条  保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。
(催告の抗弁及び検索の抗弁の効果)
第四百五十五条  第四百五十二条又は第四百五十三条の規定により保証人の請求又は証明があったにもかかわらず、債権者が催告又は執行をすることを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告又は執行をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる。
(数人の保証人がある場合)
第四百五十六条  数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。
(主たる債務者について生じた事由の効力)
第四百五十七条  主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる。
2  保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。
(連帯保証人について生じた事由の効力)
第四百五十八条  第四百三十四条から第四百四十条までの規定は、主たる債務者が保証人と連帯して債務を負担する場合について準用する。
(委託を受けた保証人の求償権)
第四百五十九条  保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する。
2  第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
(委託を受けた保証人の事前の求償権)
第四百六十条  保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。
一  主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。
二  債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。
三  債務の弁済期が不確定で、かつ、その最長期をも確定することができない場合において、保証契約の後十年を経過したとき。
(主たる債務者が保証人に対して償還をする場合)
第四百六十一条  前二条の規定により主たる債務者が保証人に対して償還をする場合において、債権者が全部の弁済を受けない間は、主たる債務者は、保証人に担保を供させ、又は保証人に対して自己に免責を得させることを請求することができる。
2  前項に規定する場合において、主たる債務者は、供託をし、担保を供し、又は保証人に免責を得させて、その償還の義務を免れることができる。
(委託を受けない保証人の求償権)
第四百六十二条  主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務者にその債務を免れさせたときは、主たる債務者は、その当時利益を受けた限度において償還をしなければならない。
2  主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
(通知を怠った保証人の求償の制限)
第四百六十三条  第四百四十三条の規定は、保証人について準用する。
2  保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、善意で弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、第四百四十三条の規定は、主たる債務者についても準用する。
(連帯債務又は不可分債務の保証人の求償権)
第四百六十四条  連帯債務者又は不可分債務者の一人のために保証をした者は、他の債務者に対し、その負担部分のみについて求償権を有する。
(共同保証人間の求償権)
第四百六十五条  第四百四十二条から第四百四十四条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。
2  第四百六十二条の規定は、前項に規定する場合を除き、互いに連帯しない保証人の一人が全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。
第二目 貸金等根保証契約
(貸金等根保証契約の保証人の責任等)
第四百六十五条の二  一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く。以下「貸金等根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2  貸金等根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
3  第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、貸金等根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。
(貸金等根保証契約の元本確定期日)
第四百六十五条の三  貸金等根保証契約において主たる債務の元本の確定すべき期日(以下「元本確定期日」という。)の定めがある場合において、その元本確定期日がその貸金等根保証契約の締結の日から五年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは、その効力を生じない。
2  貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)には、その元本確定期日は、その貸金等根保証契約の締結の日から三年を経過する日とする。
3  貸金等根保証契約における元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日がその変更をした日から五年を経過する日より後の日となるときは、その元本確定期日の変更は、その効力を生じない。ただし、元本確定期日の前二箇月以内に元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日が変更前の元本確定期日から五年以内の日となるときは、この限りでない。
4  第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、貸金等根保証契約における元本確定期日の定め及びその変更(その貸金等根保証契約の締結の日から三年以内の日を元本確定期日とする旨の定め及び元本確定期日より前の日を変更後の元本確定期日とする変更を除く。)について準用する。
(貸金等根保証契約の元本の確定事由)
第四百六十五条の四  次に掲げる場合には、貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。
一  債権者が、主たる債務者又は保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。ただし、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
二  主たる債務者又は保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
三  主たる債務者又は保証人が死亡したとき。
(保証人が法人である貸金等債務の根保証契約の求償権)
第四百六十五条の五  保証人が法人である根保証契約であってその主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれるものにおいて、第四百六十五条の二第一項に規定する極度額の定めがないとき、元本確定期日の定めがないとき、又は元本確定期日の定め若しくはその変更が第四百六十五条の三第一項若しくは第三項の規定を適用するとすればその効力を生じないものであるときは、その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権についての保証契約(保証人が法人であるものを除く。)は、その効力を生じない。

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