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1-2-2 法令科目 民法 3条‐32条/1044条 権利

 

第二章 人

 

人は生まれた時から等しく権力能力を持つと、前回までにお話しましたが、誰がどのような権利者であるかは、いろいろな要因で変化します。その要因の中で一番重要なのが契約に代表される法律行為です。そして、法律行為を単独で完全に行える能力を行為能力と言います。
今回は、①未成年者の行為能力、②成年後見制度、③相手方の催告権――の順で、行為能力に問題があって1人で行う法律行為に制限がある人について勉強します。

 

第一節 権利能力
第三条    私権の享有は、出生に始まる。
2  外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。
第二節 行為能力
(成年)
第四条  年齢二十歳をもって、成年とする。
(未成年者の法律行為)
第五条  未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2  前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3  第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
(未成年者の営業の許可)
第六条  一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
2  前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

 

Ⅰ.法律行為をするためには行為能力が必要

1)未成年者の法律行為
個人の自由な意思で自らの社会生活関係を規律していく法律行為ですが、未成年者は通常、自由な意思に基づいて権利関係を作るには判断能力が不十分と考えられています。そこで、日常では保護者が一緒に法律行為を行っていますが、民法的に言うと、未成年者が有効な法律行為を行うためには、法定代理人の同意を得てから法律行為を行うことが必要であると言うことになります。未成年の場合の法定代理人は、親権者である父母がなるのが通常ですが、親権者がいなかったりこの財産の管理権を持っていないときは、未成年後見人(後で解説します)が法定代理人となります。
未成年者が単独で法律行為を行っても、これは不完全な法律行為として、未成年者自身や法定代理人が取消すと、行った法律行為は無効となります。ただし、法律行為の相手が成年者である場合には、相手方からの法律行為の取消しは行えません。
親権者などの法定代理人が持っている権利には、上述の①取消権のほか、②単独で行為をするよう同意をする同意権、③代わって行為を行う代理権、④単独で行った行為を有効なものと確定する追認権――があります。
しかし、例外として、単に権利を取得したり、義務を免れる行為については法定代理人の同意がなくても未成年者が一人で行えます。具体的には負担のない贈与を受けたり、借金の免除を受ける場合などで、本人に不利益を及ぼさない行為です。また、法定代理人から処分を許された財産は一人で処分できます(例えばお小遣いで、お菓子を買う)し、営業を許されれば営業行為は一人で行えます(例えば実家の商売を継ぐ)。そのほか、婚姻をした未成年は成年として扱われることになっています。

2)意思能力
法律行為は個人の自由に基づいて行われるものですから、当然、自分の行為の結果を予測・判断できなければなりません。サッカー選手が「自分がAにパスを出したら、Aが相手をかわしてシュートする」と先を読んでプレーするのと同じです。先の予想・判断する能力を意思能力と呼び。この意思能力のない人の行った法律行為は無効となります。
一方、法律行為を安定して一人で完全に行える能力を行為能力と言います。そして、意思能力や行為能力のない人、あるいは、不十分な人を制限能力者と言い、未成年や成年者で判断能力の欠けた人がこれに該当します。
制限能力者は、判断能力が不十分なので、保護するためにその行為を後から取消すことができることになっています。
このほかの民法上の人の能力には、責任能力、受領能力――などがありますが、後述します。

Ⅱ.判断能力に問題ある人は保護される
民法では、一定の人に対して、行った行為をなかったことにする取消しという権利を与えています。もっとも、だまして行った行為は、なかったことにはできません。この制度は制限能力者制度と呼ばれ、現行法では、前述の未成年者のほかに、成年者では①被後見人、②被保佐人、③被補助人――の3つの類型を設けています。

1)成年後見制度
成人になっても、精神上の障害で判断(事理弁識と言います)する能力が常に欠けている人は、本人や配偶者、一定の範囲の人の請求で、家庭裁判所に後見開始の申立てを行い審判で認められると、成年被後見人になります。そして、成年被後見人の行った日常生活以外の財産行為はすべて取消すことができます。つまり、成年被後見人の法律行為を完全に有効にするためには、成年後見人に代理してもらうことが必要と言えます。
後見開始の審判がなされると、戸籍とは別に専用の後見登記等ファイルが作成されます。後見登記等ファイルを作成する目的は、取引の相手方が本人の後見開始の有無を知ることにあります。言い換えれば、相手方が後からの取消しによって、思わぬ損害を受けることを防ぐためと言えます。
2)保佐人
精神上の障害で、常に判断能力が欠けるほどではないものの、著しく不十分な人は、家庭裁判所が、本人、配偶者その他一定の範囲の人の請求で保佐開始の審判を行うことで被保佐人となります。被保佐人になると、重要な財産行為を行う場合には保佐人の同意が必要になります。重要な財産行為とは、①元本の領収・利用、②借財・保証、③不動産などの売買、④訴訟行為、⑤贈与・和解・仲裁合意、⑥相続の承認・放棄、遺産の分割――です。これらについて同意がない場合は取消しの対象となります。
3)補助人
精神障害のため物事の理解が不十分で、家庭裁判所の補助開始の審判を受けた人は、被補助人として、重要な財産行為の一部については補助人の同意がない場合は、取消すことができます。補助人は、補助開始の審判の際に家庭裁判所により選任されます。

Ⅲ.相手方の催告権
以上のようにいったん行われた法律行為が、精神上の問題とはいえ簡単に取消されると、相手方にとっては、はなはだ迷惑な話です。不利益を被ることも否めません。
そこで、こうした相手方の不安定な立場への配慮から、民法は相手方に、取消すか取消さないかの態度をはっきりさせるよう促す権利を与えました。この権利が催告権です。この催告に対しては、制限能力者の法定代理人が何の応答もしない場合には、制限能力者は与えられた取消権を失って、行った法律行為は完全に有効になります。
ただし、被保佐人、被補助人に対する催告で、応答がない場合には取消したと見なされますので、ここはその違いをしっかり覚えておいてください。

 

 

(後見開始の審判)
第七条  精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
(成年被後見人及び成年後見人)
第八条  後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
(成年被後見人の法律行為)
第九条  成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
(後見開始の審判の取消し)
第十条  第七条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。
(保佐開始の審判)
第十一条  精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。
(被保佐人及び保佐人)
第十二条  保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。
(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条  被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一  元本を領収し、又は利用すること。
二  借財又は保証をすること。
三  不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四  訴訟行為をすること。
五  贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項 に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六  相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七  贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八  新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九  第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
2  家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3  保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4  保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
(保佐開始の審判等の取消し)
第十四条  第十一条本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。
2  家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第二項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。
(補助開始の審判)
第十五条  精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
2  本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3  補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。
(被補助人及び補助人)
第十六条  補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。
(補助人の同意を要する旨の審判等)
第十七条  家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
2  本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3  補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4  補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
(補助開始の審判等の取消し)
第十八条  第十五条第一項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。
2  家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第一項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。
3  前条第一項の審判及び第八百七十六条の九第一項の審判をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならない。
(審判相互の関係)
第十九条  後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。
2  前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用する。
(制限行為能力者の相手方の催告権)
第二十条  制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
2  制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。
3  特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
4  制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
(制限行為能力者の詐術)
第二十一条  制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
第三節 住所
(住所)
第二十二条  各人の生活の本拠をその者の住所とする。
(居所)
第二十三条  住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。
2  日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。ただし、準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。
(仮住所)
第二十四条  ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなす。
第四節 不在者の財産の管理及び失踪の宣告
(不在者の財産の管理)
第二十五条  従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
2  前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。
(管理人の改任)
第二十六条  不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。
(管理人の職務)
第二十七条  前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
2  不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。
3  前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。
(管理人の権限)
第二十八条  管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
(管理人の担保提供及び報酬)
第二十九条  家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
2  家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。
(失踪の宣告)
第三十条  不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
2  戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
(失踪の宣告の効力)
第三十一条  前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。
(失踪の宣告の取消し)
第三十二条  失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
2  失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
第五節 同時死亡の推定
第三十二条の二    数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

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