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2-1-10 法令科目 行政法 行政法の一般的な法理論10

行政計画と行政契約

前回までに解説した行政立法、行政行為、行政上の強制手段は、権力的・一方的・上から目線のものでしたが、今日からは、非権力的な行政活動、一方的上から目線でない、公法的な性格は弱い行政活動を取り上げます。
今回はまず、そのうちの①行政計画、②行政契約――についてお話しします。

Ⅰ.行政計画
統治する者と統治される者との公法上の関係は、一方的・権力的な関係ですが、公共の福祉を確保するためには、必要な行為です。
しかし、公法関係と言っても円滑に行政を実行するには、一方的・権力的な方法ばかりでなく、ソフトな方法で行った方が、スムースに行政目的を達成することが期待できる場合も少なくありません。
営業停止だ、免許はく奪だ……といったハードな方法をいきなり採るより、それ以前に警告や行政指導というソフトな方法を行った方が、相手が行政の希望に沿った行動を素直に採ってくれるということがあり得るのです。
また、権力的な手段で行うとなると、法律の根拠が必要でしたね。でも、現代の複雑な社会では、法律の根拠が必要となると、日々発生する新しい行政需用に追いつかなくなることもあります。その点、権力的でない、ソフトな手段には、必ずしも法律の根拠が必要と言えないので、迅速な対応ができ、ひいては、住みよい国づくり、町づくりが可能になるわけです。
このような非権力的な行政活動の一つに行政計画があります。
行政計画とは、行政機関が行政活動について定める計画のことです。
計画を立てるということは、複雑で困難な目的を達成するために大変有効です。その理由は主に3つあります。
①目的を設定することで、目指すべき方向が明らかになる
②目標達成に向かい、全体との兼ね合いで様々な手段や方策をうまく組み合わせたり、効果的な時期や場面を選択したりできるようになる
③計画を発表することでどのような行政活動が行われるかを国民に予告することができる
以上の結果、行政活動が合理的に実施でき、数々の行政活動の間で整合性が確保できるので、限られた人員や予算を最大限に生かすことができます。また、国民を行政目的の達成に誘導し、協力を得ることが期待できます。
他方、行政計画は行政自身がどのような目標に向け、何をどういう順序で行うかということを定めたものですから、計画が実施された結果、国民生活に大きな影響があることが当然予想されます。
例えば、都市計画に基づく区画整理が行われた場合、直接にはその区画内の住民が立ち退いたり、土地を提供したりという権利の制限を受けることが考えられます。計画が合理的な内容を持ち、それが確実に実施されることで、その町の住みやすさに影響が出ますから、間接に住民の利益に関わるということも考えられます。
とすると、行政計画による個人の権利侵害を避けたり、内容の合理性を確保するために行政計画自体も法律に基づくコントロールをすることが必要となってきます。
したがって、行政計画の策定に当たっては、法律の根拠が必要です。
根拠となる法の例として、都市計画法7条、8条、11条や環境基本法15条、17条などを挙げることができます。
しかし、国民の権力を直接制限するなど権力的な性格がない限り、必ずしも法律の根拠が要求されるというものではありません。
そこで、内容の適正や合理性、民主化、利害関係人の利益を保護するために、事前手続きを要求することで、行政計画をコントロールする必要があります。
具体的には、高額な予算が必要な場合の議会による議決や、国土利用計画の策定に当たっての審議会による審議――などです。都市計画策定のために公聴会の開催、計画案の広告・縦覧、それに対する意見書の提出――などを行うこともそれに当たります。
ただし、手続統制については一般法がありませんし、行政手続法の適用もありません。したがって、計画の根拠となる法律ごとに手続きが定められ、内容はまちまちであることもあって、手続きの充実と円滑な行政計画の策定との調整が重要となってきます。
次に、行政計画を分類してまとめます。また、重要な判例もありますので参考にしてください。

【判例計画の変更に関する判例】
☆計画の変更が違法とされた判例(最判昭56.1.27)
前村長が議会の議決を経て工場誘致政策を採り、これに応じた企業Xが準備を進めていた。その後、誘致反対派の新村長が、住民の反対を理由に工場建物の建築確認を不同意とした。そこで、Xはその不同意に対して損害賠償を請求した。
①将来にわたって継続すべき一定の内容の施策を決定した場合でも、地方公共団体は、原則として拘束されないが、一定の場合には、信義衡平の原則に照らし、賠償責任を負う場合がある。
②具体的には、その施策が特定人に個別的具体的な勧告・勧誘を伴うものであり、相当長期にわたる当該施策の継続を前提としてはじめて投入する資金・労力に相応する効果を生じ得る性質のものである場合が挙げられる。

Ⅱ.行政契約
次に権力的ではない行政活動形式として、行政契約を説明します。
行政契約は、主体の一方が行政主体であり、行政目的を達成するためのものであるという点では、他の行政の活動形式と共通しています。
これまで、紹介した他の活動形式との違いとしては、まず、他の行政主体や私人と対等な立場で締結するものである点に特徴があります。また、契約ですから、私人との合意がなければ成立しません。相手の同意があるというのは、権力的な行政行為との大きな違いです。
また、行政活動には水道供給や体育館や集会所の提供など、授益的なものがあり、授益的行為は利用を希望する者にだけ、対価の支払いや施設の使用上の注意点などの条件に関する納得などを得たうえで給付すべきです。そこで、契約が必要となるのです。
また、行政契約による場合には、行政行為のような権力的、一方的な活動と比較して私人の合意が必要であるので、私人の意思を尊重したり、個別的な特殊事情を考慮したりできるというメリットがあります。
行政契約は、私人の権利下の制約の程度は小さいため、契約の締結には一般的に法律の根拠が不必要とされています。したがって、法律による規制が不十分な領域で、相手方を説得し、合意をできさえすれば必要な規制をしたのと同じ結果を導くことができます。
行政契約には、次のような5つの類型があります。
①行政サービスの提供、給付行政に関わる契約
②行政手段調達のための契約
③財産管理のための契約
④規制行政の手段としての契約
⑤行政主体間の契約
①の行政サービスの提供、給付行政に関わる契約の例は、公営住宅の使用契約、体育館等公共施設の利用契約、水道などの公共企業との利用契約、補助金交付契約――などがこれに当たります。
②の行政手段調達のための契約の例は、政府契約(物品納入契約、公共事業請負契約など)、公用負担契約(公共用地買収のための契約、私有地を道路の敷地に供する契約など)、公務員の雇用契約――などです。どれも、行政活動を実施するため必要な物資などの手段を調達するためのものです。
③の財産管理のための契約とは、国公有財産の売渡しや貸付けのための契約などのことです。
以上①~③の契約は、行政契約の中でも私人間の契約と性質が近いものが多いと言えます。
一方、公共的な色彩が強い契約もあります。その典型が④の規制行政の手段としての契約で、法律の規定が不十分な場合、協定により対応するものです。
例えば、公害防止協定は、法律による公害規制に不備があり、十分に健康被害の発生を防止できないという場合に、事業者に各種の公害防止措置を約束させる協定のことです。これによって、法律で課すことができない制約を行うことができるようになります。
⑤の行政主体間の契約も公法的なものとしての色彩が強いと言えます。
例えば、境界地の道路・河川の費用負担割合の協議(道路法54条、河川法65条)であるとか、地方公共団体間の事務委託(地方自治法252条の14)などです。事務委託というのは、たとえば、ある町とある町の境界近くの住民の子供がむしろ隣町の学校に通った方が近くて便利という場合に、学校教育を委託するとか、処理能力が高いゴミ処理施設がある自治体に、自分の自治体で発生するゴミの処理を任せる場合――などが該当します。
行政契約は、相手との合意の上で成り立つものです。このため、行政契約は法律の根拠が必要ないなど、法的統制の必要性が小さいと考えられます。しかし、合意と言っても進んで合意する場合ばかりではありません。相手が行政であるからしぶしぶ合意する場合もあるでしょう。逆に、私人が契約の締結を望んでいるのに行政がこれを認めないで、私人が不利益を被ることもあります。
例えば、集会するのに施設を使用させない場合とか、違法建築のマンションに水道を供給しない場合――などです。
そこで、行政契約への法的統制が重要になってきます。とはいえ、統制があまり厳しいと行政契約のメリットが失われますし、規制をしないと不都合が生じることを回避できません。このあたりのさじ加減が大変難しいのです。
なお、自治体間における事務委託は権限の配分の変更を伴うので、例外的に法律の根拠が必要です。
また、私人間における契約とは違い、行政契約は、行政主体の側への契約自由の原則の適用はそのままでは認められません。契約を通じて実現されるのは行政需用を満たすこと、つまり公共の福祉です。このため、行政の恣意を許すことができないのはもちろんのこと、公共性、公平性を維持することが求められます。
例えば、私人なら契約をするかしないかは、まったくの自由、好き嫌いで構わないし、その際の報酬の額なども自由に決めて差し支えありません。しかし、民営化前の郵便局が信書の送付や物品の運送を内容とする契約を結ぶに当たっては、契約締結の拒否は合理的な理由がないと認められないとされていました。郵便料金も自由に決めてよいわけではありません。国民に安価で、便利な物品送付の手段を提供するという政策を実現するためのものだからです。
同じように水道供給は、個人にライフラインを提供するものです。となると、この場合も、契約の締結の自由や契約内容決定の自由を認めることはできないでしょう。
実際にも、法律で規制をしている場合があります。郵便法5条における差別的取扱いの禁止、水道法15条における行政主体の契約締結の強制――などです。郵便法5条は憲法14条、水道法15条は憲法25条の要請とも重なるところです。
もっとも、このような法律による定めがなくても、行政契約の締結や内容の決定には、条理上、公正さ、公平さなどを維持することが行政主体には求められていると言えます。
一方、行政契約だからと言って、一切、私人間における原則の適用がなくなるわけではありません。
例えば、住宅や土地などの行政財産を私人に使用させる場合、民法における賃貸借などの継続的契約におけるのと同様の扱いをしてよい場面も考えられます。使用料の支払いが滞った場合、信頼関係破壊の法理から、使用契約の解除をしてよい――などもこの例です。
また、行政契約には、事前手続きによる規制をすることも考えられます。
例としては、まず、高額な財産を処分する契約をする場合などに、議会の議決が必要だとするものがあります(地方自治法96条1項5号)。市民の共有財産が市長の意思だけによって勝手な処分をされることを許さない趣旨です。
そして、物品納入契約、土木建築契約など政府契約の締結に当たっては、入札による競争契約が原則です(会計法29条の3、地方自治法234条)。これは、契約の締結を望む者の間で競わせて、有利な条件を提示した者と契約をすることが、経費の削減、質が高い行政手段の調達、行政主体と私人との公正な関係の維持という点から見て適切と考えられるからです。
入札によらないで行政主体が任意に選択した相手と契約を締結することを随意契約と言いますが、随意契約を行うことができるのは、特定の芸術家しかできないモニュメントや彫刻の作成や販売の依頼など契約の性質や目的などから競争を許さない場合とか、災害などで破壊された道路を応急に修繕するなど緊急の必要があるので競争入札によることができない場合、その他競争に付することが不利と認められる場合――など例外的な場合に限られます。
最後に、行政契約にまつわるトラブルを解決するための救済手段である事後の手続きをお話しします。まず、行政契約については処分性がないので、抗告訴訟によることはできません。公法上の契約について、何らかの争いがある場合には原則として当事者訴訟によることとなります。
ただし、水道の利用契約、庁舎建築の請負契約のように私人間における契約が近いものでは、民事訴訟による事件処理をするべきとされることもあります。
逆に、契約に公法的な性格が強くみられる場合には、不服申し立てを前置したうえで、取消訴訟の提起が求められます。生活保護法69条、国民年金法101条の2がその例です。不服申立ての前置は、訴訟件数を減らして裁判所の負担を軽くしたり、法律関係が早期に確定することを狙ったものです。

今日は、非権力的な行政活動の中でも、現実社会において特に大きな役割を果たしている行政指導を解説します。それでは、①行政指導の定義、②行政指導の法的統制――についてです。

Ⅰ.行政指導の定義
行政指導の定義は、法律で決まっています。
行政手続法2条6項(行政指導)
行政機関が、その任務又は所掌事務の範囲内※1において、一定の行政目的を実現※2するため、特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為※3であって、処分に該当しないもの※4をいう。
長い定義ですが、まず着目すべきは「※4処分に該当しない」の部分です。行政指導の特徴は、法的拘束力がない点で、このため、行政指導に従わない者に対して強制執行や行政罰の対象にすることはできません。
行政指導に法的拘束力がない理由は、行政指導は、国民の自発的な協力を要請するものだからです。つまり、国民は行政機関からの働きかけに対して、応じても応じなくても構いません。そこで、行政指導は、行政機関が行政目的実現のため国民に働きかけ、その自発的な協力を要請する行為とも定義されています。
次に重要なポイントは、「※1任務又は所掌事務の範囲内において」という部分です。行政指導は、これをする行政庁の任務や所掌事務の範囲内でしか行うことができません。行政指導は、市民に義務を発生させるものではなく、単に協力を要請するものにすぎないとすると、行政庁は自由に好きなように行政指導できるようにも思えますが、※1により、まったく自由ではないと言えます。
※2の行政目的実現のためというのは、行政活動である以上当然ですし、※3は行政指導という言葉の意義を述べているにすぎません。
ところで、行政指導にも種類があり、主に次の3つに分けることができます。
①助成的行政指導
②調整的行政指導
③規制的行政指導
①助成的行政指導とは、私人に対して行政が知識・情報を提供し、私人の活動を助成するものです。
例えば、営農指導、経営指導、税務相談――などです。
②調整的行政指導とは、私人間の紛争を解決する機能を果たすものです。
例えば、マンション建設主に対して、建設前に建設を反対する住民との話合いや意見の調整を図るよう指導するものですが、この調整的な行政指導は、マンション建設主や事業者にとっては規制的なものとして働く点が特徴です。
③規制的行政指導とは、違法行為を是正するものや、規制目的の積極的な達成を目指して私人の活動を規制する機能を果たすもののことです。
例えば、違法建築物の所有者に是正命令を出すに当たり先立って行われる警告や、産業廃棄物処理業者に対する操業自粛の指導などが挙げられます。
また、行政指導は、国民の自発的な協力を求めるものや国民に何かを強制するものではないので、行政側と住民の間でしこりが残りにくいと言えますから、国民との間に摩擦・抵抗が起きることを抑えながら、行政目的の達成をすることが期待できます。
さらに、法律の根拠が不要ですし、厳格な手続きを踏む必要もないため、行政需要に迅速な対応をすることも期待できます。
つまり、行政指導とは、国民にとっても行政にとっても負担が小さく、迅速にやりたいことができ、便利と言えるわけです。このため、行政指導は、ほとんどすべての行政領域で多用され、行政目的の実現のため重大な機能を果たしているのです。
とはいえ、行政指導にも問題点があります。行政指導は自発的な協力を求めるものという建前になっています。しかし、協力を依頼するのが国や公共団体となると、国民が嫌だからと、簡単にNOと言えるでしょうか? 行政に従わなかった場合の、その事実の公表や給付の打ち切りなどをおそれて、しぶしぶ従うことも実際には多いと思えます。つまり、現実には私人が服従を拒むことは困難と言えるのです。
また、行政指導は多用されているわけですから、私人の利益にきわめて大きな影響を与える結果を生むことが容易に想像できます。
その上、行政指導は形式的には国民の権利を制限するものでも、義務を発生させるものでもありません。このため、処分性が否定され、抗告訴訟の対象にすることができなくなるおそれがあります。
そして、行政指導によって損害が発生した場合でも、あくまで行政庁は働きかけをしたにすぎず、指導に従ったのは私人の意思によるものという点を強調すると、国家賠償請求も難しいということにもなり兼ねません。
さらに、私人が素直に行政指導に従った場合、行政庁としてはスムーズに事が運んでありがたいということになり、その私人に対し、別の場面で便宜を図るという、監督官庁と業界の癒着を生むおそれさえないとは言いきれません。
ここで、行政指導を巡る判例を紹介します。覚えておきましょう。
☆指導要綱による加発負担金事件(最判平5.2.18)
市がマンションを建築しようとする事業主に対して指導要綱に基づき教育施設負担金の寄付を求めた行為が、行政指導の限度を超え、違法な公権力の行使に当たるのではないかどうかが争われた。
①行政指導として教育施設の充実に充てるため事業主に対して寄与金の納付を求めること自体は、強制にわたるなど事業主の任意性を損なうことがない限り、違法ということはできない。
②本件指導要綱は従わない事業主には水道の給水を拒否するなどの制裁措置を背景として義務を課することを内容とするものであり、指導要綱に基づく行政指導に従うことができない事業主は事実上開発等を断念せざるを得ず、マンションを建築しようとする以上当該行政指導に従うことを余儀なくさせるものであり、負担金の納付を求めた行為はその納付を事実上強制しようとしたものである。
③当該指導要綱に基づき教育施設負担金の寄付を求めた行為は、違法な公権力の行使である。

Ⅱ.行政指導への法的統制
上記のような行政指導を巡る様々な問題を克服するための方法を紹介します。
まず、①法律による統制です。
行政指導に当たっては、性質上、直接の根拠規定は不要とするべきです。しかし、どんな行政指導でも自由にできるわけではなく、当該行政機関の所掌事務の範囲に限られる(行政手続法32条1項)という点で、行政指導には組織法上の根拠が必要と言えます。また、法律優位の原則は妥当しますから、何らかの法の定めがある場合にこれに抵触する行政指導を行うことはできません。
さらに、行政法上の一般原則である平等原則、比例原則は行政指導にも及びます。これらに違反する行政指導は違法と評価され、抗告訴訟、国家賠償などの行政救済の対象にすることが可能となります。
また、程度を超えた指導や働きかけ、勧奨があるとき、行政指導が持つ自発性に反し、事実上の強制と評価できることがあります。この場合は、処分性が認められ、抗告訴訟の対象とすることができますし、被害が発生した場合には国家賠償の対象にすることもできます。
上記は、事後の救済手続きですが、事前手続きによる権利侵害、国民への不利益の発生を防止する方法も考えられます。これは、次の行政手続きの項で詳しく解説することにします。

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